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抜粋 はじめに

 「テレビジョンは慰安や娯楽にとどまらず、国民生活全体に革命的とも申すべき大きな働きを持つ」
 1953年2月1日、日本で初めてテレビ本放送に踏み切ったNHKの会長・古垣鉄郎は、こう予言した(日本放送協会編『放送五十年史』)。
 それから 余年。予言どおり、テレビは人々の生活様式を変えた。数千万人単位の大衆に、リアルな映像を同時に届けられる媒体は他にない。テレビは還暦を過ぎた今も、圧倒的な影響力を有する。
 しかし、インターネットの急成長をはじめとする技術革新で、テレビは曲がり角に立っている。
 NHKが5年ごとに行なう国民生活時間調査によると、テレビ視聴時間は2010年の平日で3時間28分だった。長年ほぼ横ばいながら、高齢者で増加し、若年層では減っている。1日15分未満しかテレビを見ない人も、20代では2割に上る。
 テレビ離れの進む若者の行き先は、主にネットだ。スマートフォンさえあれば、いつでも、どこでも、好きな情報を入手し、自ら発信もできる。決まった時間に一方的に番組を送り付けてくるテレビが、窮屈で古くさく感じられるのも無理はない。
 とはいえ、ネットはテレビの味方にもなる。例えば、ツイッターやフェイスブックによる口コミが、視聴率を押し上げることがある。テレビを見ながらコメントを交わすことで、お茶の間で家族そろって視聴する楽しさが、全国の同好の士に広がる。
 テレビ自体もデジタル化を終え、ネットとつながる新型受像機やサービスが次々に登場している。放送と通信の融合は勢いづく。
 ただし、肝心の中身が技術の進歩に追い付いているかといえば、心もとない。優れた作品ももちろんあるが、アイドルやお笑い芸人が並ぶ似たような番組に、うんざりしている視聴者は少なくないだろう。テレビ局による誤報や不祥事も後を絶たない。
 画面の向こうで、何が起きているのか。本書では、この「マスメディアの王様」の姿を多角的に描き出そうと試みた。
 第1章で地上放送各局の人気番組の舞台裏をのぞき、第2章で地方局やBSのユニークな番組を訪ねる。第3章では編成・制作・報道の現場の激変をルポする。「スマートテレビ」と呼ばれる多様な動きを追う第4章、超高画質の「スーパーハイビジョン」などを特集する第5章は、最先端技術のショーケースだ。第6章で公共放送NHKの在り方を再考し、第7章では放送の自由と政治的圧力のせめぎ合いをたどっていく。
 大きく変わりつつあるテレビの実像とは―。

日刊ゲンダイ 2015年4月14日
        (「NEWSを読み解く今週のキーワード」)
 【テレビの正体】
  「質の低下」が叫ばれるテレビ界。その嘆かわしい実態を
   検証する。

 一昨年はテレビ放送開始60周年。テレビも還暦を迎えたわけだ。エンタメ、ジャーナリズム、ビジネス、テクノロジーとテレビの顔は多面的。その魅力を伝える共同通信の連載を元にした本書は、フジテレビ「月9」やテレビ朝日「お願い!ランキング」など人気番組の裏側からBSジャパン「空から日本を見てみようplus」などの個性派番組までを広く取り上げる。一編が短いため本になるとやや物足りない印象も。
 連載当時はなかったNHK"モミイ問題"も改めて章立てしているが、「実像」というからにはもう一歩踏み込んでほしかったのも正直な読後感。

北日本新聞 2015年4月29日

 テレビの「今」描き出す
 原さん(共同通信富山支局長)連載を本に

 メディア取材に長く関わってきた共同通信富山支局長の原真さんが「テレビの実像 人気番組の舞台裏から政治的圧力まで」=写真=をリベルタ出版から刊行した。
 原さんは1995〜2009年まで文化部に在籍。編集委員を経て、14年4月から現職。本書は、13年4月から12月まで全国の新聞社に配信された原さんの連載「還暦テレビの実像」に大幅加筆し、まとめた。地方局やBS放送の舞台裏をのぞいた「光る個性派番阻」、インターネットとの連携を探った「スマート革命」など、各章でテレビ界の現状を紹介した。
 最近のNHKをめぐるさまざまな問題も取り上げ、公共放送の在り方も問うた。
 原さんは「インターネットなど技術革新でメディアを取り巻く環境が激変する中、テレビの『今』を多面的に描きたかった」と話している。

出版ニュース 2015年5月上旬号

〈テレビはエンターテインメントであり、ジャーナリズムであり、ビジネスであり、テクノロジーである〉
「マスメディアの王様」テレビは、インターネット時代を迎えて大きな曲がり角に立っている。本書は、2013年に共同通信社から配信された連載記事「還暦テレビの実像」をベースにテレビの現在を多角的に論じたものだ。ドラマ〜ニュースショーまで人気番組の舞台裏、新しい試みと個性派番組、スポーツや報道、編成、地方局など番組づくりの現場ルポ、最先端技術の現状、公共放送NHKのあり方、放送の自由と政治的圧力のせめぎあいまで、テレビの変容がダイレクトに伝わってくる。

新聞研究 2015年5月号(No.766)

 日本での放送開始から2013年で60年を迎えたテレビは、技術革新や若者のテレビ離れといつた難題に直面している。本書は、同年4〜12月に共同から配信した連載を基に、NHK会長の発言問題などその後の動きを加筆し、テレビの現状を描き出した。各局の人気番組や個性派番組の制作者の思い、ネットとの融合や8Kといった新技術、放送免許をめぐる政治との関係など、幅広い視点からテレビの将来像を考えさせる。

週刊現代 2015年5月30日号
       (「リレー読書日記」堀川惠子)

 …そもそも、価値観が多様化した現代社会で、人を右左に二分することに大した意味はない。だが強硬なネット世論が、政治による報道の圧力を後押ししているのも現実だ。原真著『テレビの実像』は、日本のテレビ局が政府のプロパガンダを繰り返せば逆に国際的な信用を失うこと、そして最大の問題を「自主規制」と指摘する。右左でない正論だ。
 政権に上目づかいの安易な両論併記や、政府の主張を無批判に垂れ流すニュースが増えている。今国会は、報道が問われる正念場。テレビ業界にも、真の『ジャーナリスト』たちはいるはずだ。

信濃毎日新聞 2015年5月24日

 放送開始から62年を経てなお、人々に影響を与え続けるテレビ。その制作者や出演者、経営者らを取材し「マスメディアの王様」の素顔に迫る。
 地元ケーブルテレビなどとの連携で地域に根を張る地方テレビ局の取り組みから、発言が物議を醸すNHK会長の選任の裏側まで、テレビを取り巻く状況を活写。ダイオウイカの番組担当者がテレビの原点を「見たことのないものを見せる」と語った言葉が印象的だ。
 共同通信が2013年、全国の加盟新聞社に配信した連載企画に加筆。

GALAC 2015年7月号

 1953年に、日本に登場したテレビ放送も還暦を迎え、往年の勢いに陰りが見えてきたといった声も聞かれる昨今だ。本書は、2013年、日本でテレビ放送が始まってから60年が経ったのをきっかけに、共同通信が配信した連載企画「還暦テレビの実像」を大幅加筆して、1冊にまとめたものだ。
 ヒット番組の裏側から、いま話題の4K8Kテレビのほか、放送政策の動きに至るまで、いまのテレビを「横」に斬り、その断面を並べることで、テレビの実像に迫ろうという企画である。全国の地方紙に記事を配信する共同通信の連載企画ということもあるからなのか、ローカル局を取り上げたトピックが多いのが、本書の特徴だ。心温まる話も多く、それらの話題を眺めていると、日本のテレビの多様さは、ローカル局で持っているような気すらしてくる。
 著者の原真氏は、共同通信で長らく放送担当を務めてきた。原氏は、報道機関たる放送局のあり方についても、継続的に追い続けてきた記者として知られる。その原氏が、精力的に取材を続けてきたのが、政治と放送との関係である。
 昨年1月の籾井勝人NHK新会長の就任会見以来、NHK会長らしからぬその言動は、さまざま波紋を呼んできたのは周知の通りである。他方で、安倍政権のメディアへの強硬姿勢も、たびたび問題にされてきた。著者は、本書の全体の3分の1以上を割いて、これまで以上にメディアへの攻勢を強める政権与党と、防戦一方にならざるを得ない放送メディアとの関係を冷静に検証していく。
 そのうえで、放送メディアの自立が、いま、いかに求められるべきなのかを改めて説いている。還暦のテレビ論と言いながら、いまのテレビを叱咤激励した良書といえよう。
                       (音好宏)

ジャーナリスト 2015年6月25日

 重大な岐路に立つテレビ
   −その内幕を多角的に解剖する−

 テレビとは不思議な存在だ。筆者が言うとおり「エンターテイメント」であり、「ジャーナリズム」であり、「ビジネス」であり、「テクノロジー」である。そもそも「テレビ」と言う言葉は多義性を持つ。状況に応じて「テレビ番組」「テレビ局」「テレビ受像機」と変幻自在に意味が変化する。
 本書は、「テレビ番組」の観点から、「笑点」(NTV)や「ダーウィンが来た」(NHK)「世界ナゼそこに?日本人」(TV東京)などの番組が、なぜ「人気」を維持できるのか、舞台裏を含め分析する。
 一方、番組制作の世界で、きらりと光る「個性派番組」やチャレンジするローカル番組を発掘し、とくに障害者の多様性を伝える「バリバラ」(NHK大阪)、制作費ゼロの視聴者参加番組「たまたま」(テレビ埼玉)、行政の広報を番組にした「発掘!広島MAX」(広島テレビ)など地方のユニークな試みを紹介する。
 技術の観点で見ると、「スマート革命」といわれるように、ネットとテレビの連携は避けて通れない。著者はこうした状況の中で、番組配信に消極的な日本のテレビ局に対し、「世界から孤立するガラパゴス化が、また起きようとしているのか」と警告を発する。
「揺れるNHK」と「自由と干渉」の項では、安倍政権の常軌を逸したテレビ報道への政治介入を取り上げる。権力にとってテレビは「宣伝媒体」に他ならない。危機に瀕するテレビ報道の現場で何が起きているか、さらなる実態追及のレポートを期待する。
              (倉澤治雄=ジャーナリスト)

放送レポート 2015年9月号(No.256)

 一昨年、テレビは還暦を過ぎた。テレビ広告費の伸びが鈍化し、ネットが全盛時代を迎える中で、マスメディアの主軸にあったテレビも陰りが見えると言われるようになった。
 原真著『テレビの実像』(リベルタ出版、本体価格1700円)は、記者としての豊富な取材をとおしてテレビの現状を多面的に描き出している。
 半世紀近く続く『笑点』人気の秘密は出演する落語家たちのキャラができあがり、老若男女みんなが楽しめる「分かりやすさ」にあるという。テレビネットワークに属しないテレビ埼玉は、厳しい制作条件を逆手にとって制作者と視聴者との距離を一気に縮めるバラエティ番組を成功させた。また、テレビ局を頼らず自力の資金調達で作品を制作し、映画やインターネットで公開を目指す制作会社がある。その他にも、ケーブル・FM・他局と連携を広げて地域情報の強化をはかる地方局の試みなど、本書に紹介された個性的で自由な制作現場のエネルギーは、テレビの役割を単純に後退させないだろうと予感させる。
 著者は、メディア環境の変化に悩みながら果敢に挑戦する現場に優しい眼差しを向ける。だが、NHKの現状と政府権力によるメディアへの干渉にはきわめて批判的だ。
 籾井勝人会長の慰安婦問題への一方的発言や領土問題で政府の立場を代弁する意向を明確にしたのは、放送法抵触の疑いが強い。安倍首相が任命した経営委員の問題もNHKの独立性を揺るがすものだと指摘する。NHKは国際放送に力を入れるが、政府見解を重視する会長のもとでは政府のプロパガンダになりかね
ないという。国内の視聴者にはあまり知られていない国際放送の問題に警鐘を鳴らした意義は大きい。