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抜粋 あとがき

「就活」というテーマは中学生には早すぎるのではないか。本来、主たる読者は高校生や大学生を対象と考えるのが普通ではないかと思う人もいるでしょう。
 あえてそうしなかったのは、「就活」まっただ中の人が読んでも「間に合わない」からです。自分が「商材」とされていると自覚しても、おそらく多くの学生は別の脱出路を見いだしたり、まして作り出したりはできないでしょう。なにしろ、採用側(特に人事部)に時代遅れの失策を続けている意識がなく、かつての成功体験をなぞるばかりで改革の意欲はほとんどありません。新しいしくみを採り入れることは、それまで培ってきたノウハウを無にする行為で、人事部の人間がリストラにあう羽目になってしまいますから。
「就活」には多々、問題があるにしても、採用企業にとってメリットがあるのなら、百害に目をつぶっても、その一利で評価できるかも知れません。なんといっても、営利企業が操業を続けないことには、雇用は生まれないからです。
 ところが、採用する企業にとっても、もはや、新卒一括採用を維持することに、何のメリットもありません。「学生に白紙であれ」と要求することと、「即戦力として来い」と言うことは矛盾です。
仮に、新卒一括採用というしくみがしばらくは残るにしても、『リクナビ』や『マイナビ』を使う告知は遠からず滅びます。わざわざ、就活サイトなどというメディアに求人情報を掲載しなくとも、自社サイトにその情報を載せておけば、グーグルやヤフーのような検索エンジンがそれらを取りまとめてくれますから。
 検索のヒット率を上げるために、「新卒採用」というタグを入れておけばより正確でしょうし、求人の精度を上げるために、「出版」「物流」などの産業別を表すタグと、「営業」「製作」などの職種を示すタグを埋めておけば良いことです。
 この程度の単純なルールを普及させるだけで、推定1000億円、毎年100万人弱の検索を取り込めるのですから、目ざといグーグルやヤフーが見逃すはずはありません。
 また、採用する企業も自社サイトの更新だけで済むのですから、数百万円も払って採用サイトを利用する必要もなくなります。
 リクルートやマイナビの人は、これまでと違って手間はかかりますが、「プロジェクト型インターンシップ」や「バイターン」の統括者として、高い付加価値の業務に移行すれば良いのです。

「就活」をテーマとした本でありながら、ずいぶんと大風呂敷を広げてしまいました。それを畳むには、低付加価値労働に従事する人(つまり、月給30万円に届かない単純労働に就く人)に対する保障としてベーシックインカムや、ブラック企業によるその悪用対策などについて語る必要がありますが、ページの都合で割愛しました。
 これらに関しては、いくつもの専門書が出ておりますので、そちらを参考にして、これからの働き方や健康で文化的な生活について考え、その意見をご両親や先生などの大人と話し合ってみてください。終身雇用に代わる人間らしい暮らしができる働き方を求めているのは一緒なのですから。

ZAITEN 2014年1月号(ZAITEN Book Review)

 大学生活も半ばを過ぎると多くの学生は学業を放棄し、黒のスーツに身を固めて街に繰り出す。一見、異様な光景である。そのうち、いくら応募しても「内定が取れない」ことを思い悩み、死を選ぶ者すら出てくる。これは一体どうしたことか? 背景には何があるのか? 疑問を突き詰めていくと、その陰に蠢く就活産業の「不都合な真実」に遭遇する。そんな構図を著者はやさしく解き明かす。
 「就活」は広告ビジネス、学生はその「商材」、というのが本書のキー概念である。就活産業のもっぱらの関心は、企業からどれだけ広告費を集めるかにあり、学生のその後の運命なぞまるで関心外なのである。だから、ブラック企業に就職させられたり、ミスマッチからすぐに辞めたりすることになる。むしろその方が、「転職」という新たなビジネスチャンスに恵まれる、というわけだ。
 日本独特の「新卒一括採用」システムは、とっくに使命を終えている。学生にとっても企業にとっても、もはやネックでしかない。なのに、いつまでもそれが残り続けているのは、その方が就活産業にとっては効率がいいからなのだ。この国の「就活」の有り様はいま、根本から問い直されている。(担当編集者「自薦」)

【はやしはじめ】最新ビジネス情報 13004号

「良い大学に行って、ちゃんとした企業に就職して」という一種の恐怖感にさらされながらリクナビやマイナビに登録して、必死で就活を行う若者たち。肥大化した就職ビジネスの様子をわかりやすく解説している本です。
 創造性を伸ばさない教育のせいで、せっかく大学を出ても、収入のためになんでも良いから働き口を探さなきゃならない。こんな世の中を変えるためにはまず就活のナンセンスを知ることも大事ですね。本当の夢を実現するためには就活は回り道ですよ。大丈夫、この日本では飢え死にすることはありませんから。心配せずに、ゆっくりと自分の道を探しましょう。自分の道を見つけてこそ、本当の親孝行ですよ。

ふぇみん 2014年1月15日(No.3044)

 正規職に就くのが困難な今の時代。職を求める学生たちは、「リクナビ」などの「就活」サイトに登録し、自分を売り込む。だが、マーケテイング・プランナーで広告代理店の勤務経験を持つ著者は、「就活」サイト運営会社の真の顧客は求人企業であって、学生は単なる「商材」と断言する。
 企業は就括サイト運営会社に多額の広告費を出し、それが著者の見積もりでは600億円にも上る。こんな金のかかる方法は、短期間で辞め、転職を繰り返すことが多い時代にはそぐわないと言う。
 多くの提言がある。これからの就職活動は、欧米のようにボランティアで経験を積み、インターンでマッチングする(ただし受け入れる企業の力量も必要)。企業は各自がウェブサイトで新卒も既卒も募ればよい。「3年間公務員ワークシェアリング」の導入論には目を見張る。
「就活」を変えることは、社会を変えることにつながると説く。缶コーヒー不要論も面白い。(三)

図書新聞 2014年2月8日(No.3145)

 「就活」ビジネスの闇と問題点
    ―社会構造の転換こそが、解決の決め手―
                         萩原信彦

 「失われた20年」と呼ばれる長期不況、デフレで、大学新卒者の就職も「狭き門」になり、「就活」という言葉が数年前からメディアをにぎわすようになっている。かなりの時間をかけて、学生が能動的に就職先企業の開拓に取り組む活動を指すが、こういう活動をしなければならないほど、学生の「就職」が困難になっていることの反映でもある。本書は、新卒学生が就活を余儀なくされる背景に先進国では類例のない新卒一括採用システムの存在があり、さらに様々な「求人雑誌」の本質的な矛盾も絡んでいる、と指摘している。広告代理店やコンサルティング経験に基づく鋭く的確な、「就活」問題の分析・批判だ。
 著者は、リクルートやマイナビ(旧名・毎日コミュニケーションズ)などの「就活企業」がネットで展開している「就括情報」は、採用予定企業からお金をもらっており、一般のフリ−ペーパーの読者は消費者だが、就活メディアの利用者は「商材」なのだ、と指摘する。「あなたという商材」を、広告出稿企業の採用窓口に立たせるよう動機付ける広告ビジネスが、就括産業なのだ、と。
 だから、いわゆるブラック企業や反社会的勢力と関わりがあるといわれる企業でも、掲載料を出せば、求人・採用情報は載せることが出来、どこにも「問題のある企業だ」などとは書かれない。一般広告のように、日本広告審査機構などによるチェックも何ら行われない。
 また、新卒一括採用というシステムも日本独自のもので、終身雇用制が壊れた現在では、企業にとっても時代遅れになりつつある、という。しかし、「就活」広告ビジネスは1000億円を超す「巨大ビジネス」であり、広告業界にとっては手放せない「ドル箱」のため、当面、大きな
変化は起きそうにない。特に、就活ビジネス最大手のリクルートは、学生の不安を巧みに利用したり、「第二就活」と称して、最初に採用された企業の職場になじめなかったり、不満を持つ新卒者の転職を煽るなどして、新卒就活の本質的な問題・矛盾を隠蔽している、と著者はリクルートのやり方と社会的責任への無配慮ぶりを手厳しく批判する。
 こうした「行き詰まり」を打破する手法として、ドイツなどでは、15歳くらいから少しずつ働き始めて、自分の適性を探す「インターンシップ」が普及している。「ここで働きたい」という就職先が見つかったところで卒業して就職するため、欧州の大学には卒業式はないのだという。しかし日本では、せいぜい職場見学も優秀な学生の「囲い込み」としてしか機能していない。著者は、就活広告に企業が注ぎ込んでいるお金を管理職の養成に回し、インターンシップの学生と新規事業などを立ち上げることが出来るようになれば、企業にとっても、学生にとってもハッピーな結果をもたらすとして、経営者の発想の転換を求めている。
 また、日本の企業風土として、所属した会社に対する「過度の忠誠心」を求める傾向があり、複数の組織や企業に所属する「複業」をはとんど認めないため、スキルアップや転職の自由が実際的にははとんど実現しないことも指摘。社会保険や年金が「ひとつの企業への奉職」を前提として組み立てられているため、「複業」が福祉面でも大きなハンデを背負い、実行しにくくなっている弊害も問題視している。そして、「就活」を変えることは、就活産業のビジネスモデルを変更させることにとどまらず、日本社会全体を変革することになるため、難問も山はどあるが、少子化、終身雇用制の崩壊、製造業主導時代の終焉などの社会経済情勢の転換で、もはや「大卒一括採用」は企業にとっても、学生にとっても、メリットはなくなっているので、新しいパラダイムに基づく仕組みの構築が喫緊の課題だ、と警告を発している。
 このためには大学白身の改革も不可欠で、教育ビデオや教育のコンピュータ・プログラムのレベルの向上で、「4年制大学への進学」が就職の「決め手」になる時代も終焉するのではないか、とも指摘している。
 「就職氷河期」と「ひどい雇用条件のブラック企業の拡大」で苦しむ学生の現状については、近年、若手の著者も含めて多数の本が出ているが、社会構造の転換が最終的な解決の決め手と強く訴えている本書は、この間題の本質を捉えるうえで示唆に富む「提言の書」と言えよう。学生、企業双方に一読を勧めたい。
                          (評論家)

出版ニュース 2014年3月上旬号

 若者という「商材」を、企業の採用担当者の前に立たせるように動機づけるのが広告ビジネス=就活産業であると規定する著者は、ブラック企業こそ、求人広告に大金を払ってくれる大切なお客様であると書く。お客様であるので、退職率が高いことや残業代が不払いであるかをよく知っているが、その内情を就活生に
漏らすことは絶対にないとも書く。現状の新卒一括採用システムは先進国では他に例をみないものだと異議を唱え、今後は「就活という広告」に費やされる予算を新しい事業の立ち上げの原資として若者の雇用に充てることや、プロジェクト型インターン等の就活代替案を提案している。