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抜粋 まえがき

戦後日本の住宅は、毒まみれの短命住宅に置きかえられてしまった。
戦後間もなく制定された建築基準法によって、日本の風土に合ったそれまでの技術が捨てられ、大量の住宅建築が行なわれてきたが、それは欠陥住宅だった。
日本の木造住宅5万3000棟の耐震調査を三年間かけて行なったところ、76%の住宅が危険であると診断された。戦後の建築基準法にもとづいて建てられた家のほとんどが、地震で倒壊する危険があるというのだ。
阪神大震災で倒れた家の多くは、大手ハウスメーカーによって建てられたものだという。かつて日本には、100年以上持つ住宅を建てる技術があった。それをこれほどまで短命にしてしまった原因は、どこにあるのだろう。
日本の住宅がもろくなり始めたのは、住宅不足の始まった高度経済成長期と重なる。
1959年に米国から帰国した松田妙子氏は、日本の住宅不足の解消に、大手建設会社の協力を得て北アメリカからの輸入材を用いたツーバイフォー(2×4)工法を導入した。2インチ×4インチ材を二枚重ねて柱代わりに使う工法で、大手ハウスメーカーは競ってこれを導入した。壁工法ともいわれ、これにベニヤ板が貼りつけられた。
こうして作られた住宅が毒を出し続け、20年足らずでトロけてしまう実態が明らかになった。外国から輸入された木材は日本の気候風土に合わなかった。乾燥した大地で育った輸入材は、高温多湿の日本の風土には耐えられなかったのである。
ここにきて松田氏は、米国の友人から「100年も持つ住宅を作れる日本の技術を捨てていいのか」と問われたのをきっかけに、「確かに安い住宅を大量に作る時代ではなくなった」と考え直し、この間に失ってきた日本の木造軸組工法の復活に向けて歩みだし、「大工塾」を創設して、技術者の養成に取りかかった。
これまで日本は外国から木材を輸入し、世界の森林を破壊し続けてきた。しかし、日本には世界に類を見ないほどの人工林があり、利用を待ち続けている。これを国内で使えば日本の山を元気にさせ、同時に世界の森を守ることになる。世界の森を次々に破壊し続ける、儲け本位の日本商社の行為はもはや許されない。
近年日本の伝統工法で建てる家に、科学的な力学計算が行なわれるようになり、建築基準法が改正された。土壁にも十分な強度があることが証明され、危険な断熱材や壁材に頼らなくても家が作れるようになったのだ。
筆者が日本の森を守る仕事にかかわるようになって、40年以上になる。だからこのたび自宅を新築するにあたっては、土台のクリをはじめ、スギ、ヒノキ、アカマツ、ケヤキといった地元の木材を用いることにした。これらが世界的に見てもトップクラスの強度をもつ木材であることも知った。
と同時に、自然乾燥材で木の良さを十分に引き出した。また、木と木を組み合わせ木栓で止めていく、60年ほど前までは日本でごく当たり前に行なわれてきた伝統工法で家を作った。
こうして100年、200年、あるいは500年も持つ「こだわりの家」が、大手ハウスメーカーに負けない価格でできあがった。
                  2010年3月
                         宮下 正次 

書評 上毛新聞 2010年6月20日付

タイトルは「100年」としたが、著者が目指したのは「500年持つ住宅」。そのためにオーストリアまで足を運び、築600年の住宅の秘密を探り、「新月に伐採した木材は長持ちする」という結論に至る。
高崎市中島町に土地を求め、2004年から建築に取り掛かる。最初は赤城南面で松の「新月伐採」を試す。また住宅の床下には多量の炭を埋設した。著者は森林の会事務局長で、かつて前橋・敷島公園の土壌pHを炭まきで改善した実績を持つ。この体験から床下だけでなく、掘りごたつでも炭を使う。
素材のこだわりはこれだけにとどまらない。基礎の仕上げは御影石。壁には竹を芯に使い、わらを練り込んだ粘土でしっくい壁とした。サッシは木製枠、風呂にはヒノキ材を用いるなど、建具や内装もすべて国産材とした。
今春、住宅は完成した。しかし、その途中で工務店が一方的に撤退してしまったり、梁材が不足していることが判明するなどのトラブルも起き、着工から6年もかかった。本書は素材選びから住宅が形となっていく経過を写真と文でたどる。「本物で長持ちする住宅を造りたい」という施主の初心を完徹している。

書評 いせさき新聞 2010年7月2日付

 自身の家づくりで実証
 「こうすればできる100年住宅」

            宮下森林の会代表

森林(やま)の会代表の宮下正次さん(65)が、自身の家づくりで実証を試みた「こうすればできる100年住宅」(リベルタ出版)を出版した。
玉村町板井に住んでいた宮下さんが、隣接する高崎市中島町に建てる住宅の木材の伐採を始めたのが04年。今年1月に障子や襖が入り7年越しに完成した。
自然乾燥させた地元の木材は、伐採時期からこだわった。冬の新月の最も沈静化した状態が、丈夫で長持ちするという。
接合部には金物を使わない、手刻みの伝統工法を採用。床下や壁には炭を多用。塗り壁の骨組となるタケ小舞は、竹割から麻ひもで結ぶ作業を自身で行っている。

書評 毎日新聞 2010年7月19日付「環境」欄

 木の魅力引き出す家造り

 筆者は市民団休「森林(やま)の会」の宮下正次さん。
 かつて日本の住宅は、接着剤を使わず木と木を組み合わせる「伝統工法」で建てられ、100年維持することも珍しくなかった。筆者は自宅の新築に当たり、木の魅力を極限まで引き出すことにこだわった。使用材は地元のクリやヒノキなど。材質が最も安定する冬の新月に伐採し、自然乾燥させてつやがあり、強度の高い木材に仕上げた。床下などに炭を敷きカビやシロアリ対策を図った。
 現在、国産材が有効利用されないため森の手入れが不十分となり、生物多様性保全や地球温暖化防止などへの悪影響が指摘されている。森の価値を考える上でも興味深い1冊だ。

書評 サンデー毎日 2010年8月8日号「サンデーらいぶらりぃ」

「山林(やま)の会」代表の著者は、元林野庁関東森林管理局職員。退職後、木材選びから搬出までのすべてを自らの手で行い、釘1つ打たない伝統工法で家を建てた。先人の知恵だけでなく、建築基準法など日本が抱える住宅の問題点が見えてくる。

書評 出版ニュース 2010年8月上旬号

 関東森林局に勤めていた著者は、外材・プレカット・金具止めが一般的となったハウスメーカーの家は家とは呼べないといい、国産の木を使った家作りに着手した。まずは、木材の味を引き出し、活かしきるために新月のときに木を伐採し、自然乾燥させる。こうやると材は艶を増し、強度のある材に仕上がる。次は、日本の優れた匠の技ともいえる手刻みによる軸組工法で、桁を差し込む穴を大工が手で刻み、刻んだ材はよく乾燥させたシラカシで作った込栓で止める。基礎は超高強度コンクリートの上に御影石を並べ、壁は土壁と漆喰で仕上げていく。本書は、このこだわりの家作りの記録で、これが大手ハウスメーカーに負けない価格でできるとは驚きである。

書評 朝日新聞 第2群馬版 2010年8月20日付

 自宅新築の経験もとに1冊に
 100年住宅こうすれば

  植林活動NPО代表高崎の宮下さん

 ブナの植林活動をしているNPО法人「森林(やま)の会」代表の宮下正次さん(65)が、高崎市中島町に自宅を新築した経験をもとに、「こうすればできる100年住宅」(リベルタ出版)を出した。国産材と日本の伝統的な工法で寿命の長い住宅ができるという。宮下さんは「健康のためにも環境のためにも100年はもつ住宅を建てるペきだ」と話している。
 こだわったのは木の伐採と乾燥だ。木材は冬の新月の時期に切るとよいという。宮下さんが訪ねたオーストリアの森林研究者によると、木も動物と同じで、月の満ち欠けに影響を受けている。新月のころは木も眠っており、この時期に切り出された木材は緻密で虫やカビに強くなるという。
 宮下さんは「奈良では、新月の闇夜に切ったヒノキは虫がつかないといういわれがあり、日本でも経験的に知られていること」と話す。
 乾燥方法も大事。伐採した木を枝をつけたまま山中に半年から1年放置すると自然に水分が抜けて絨椎質がしまるのに対し、人工乾燥させた木材は木材の劣化が進み、強度が弱くなると指摘する。
 家づくりに取り組み始めたのは2004年。自ら、赤城山のふもとや南牧村など県内各地を見て回り、知り合いの森林所有者らから木を分けてもらった。
 06年、ようやく家の建設を始めた。調達した木材をベテランの棟梁に頼んでほぞを刻み、くぎやねじを用いない伝統的な木組みで柱やはりを組んだ。「金具は最初は締まっているようでも「次第に緩んでくる。家を100年以上持たせようと思ったら、木と木を直接組んだ方がよい」という。
 壁は新建材を用いず、粘土にわらをすき込んだ荒壁の上に漆喰を塗った。湿気を防ぐため床下には粉炭を敷き詰めた。
 木造2階建て延べ床面穣230平方メートルの家が完成したのは今年1月。総工費は約6千万円。宮下さんは「家の大きさからすれば、大手ハウスメーカーの住宅と比べても決して高くはない」と話す。
 木の伐採や乾燥方法などは簡単ではないが、「メーカー任せにせず、森林組合に頼めばやってくれる」と助言している。

書評 自然と人間 2010年9月号

 日本の住宅寿命は世界にまれにみる短命です。もう少し長持ちする家がほしい。病気にならない家がほしい。有り余る国産材を自然乾燥して、組み上げ、壁は土壁・漆喰仕上げ。「木」への徹底したこだわりと炭の力を生かしました。「こだわりの家」の空気はしっとりとし、いつまでも離れたくない居心地。こだわりの家が大手ハウスメーカーに負けない価格で出来上がったこともうれしいことです。

書評 図書新聞 2010年9月4日付(No.2980)

 日本の伝統工法で住宅を作った
 著者の熱い思いに圧倒された

 押し寄せる生活危機の実相、「毒まみれの短命住宅」に警告

 本書は、長らく森林管理局(旧営林局)に勤務し、森を守る仕事に従事してきた著者が、自宅新築にあたって、徹底的に木にこだわって作った、足掛け7年間のプロセスを環境的視点からの説得力ある筆致で綴ったものだ。
 主眼は、国産材を使用し、自然乾燥によって「木の良さを十分に引き出し」、「木と木を組み合わせ木栓で止めていく、60年ほど前までは日本でごく当たり前に行われてきた伝統工法で家を作った」ことである。そして、なによりも、『炭はいのちも救う』や『炭は地球を救う』などの著書を持つ著者ならではの考究の仕方が、家作りに反映している。まず、「敷地に3カ所の穴を掘って高温で焼いた粉炭を埋め」て、その上に「コンクリートによるベタ基礎で固め」る。さらに床下には炭を敷き詰める。そのことによって、「冬は暖かく、夏は涼しい環境ができあがる」というのだ。
 わたしは、長く耐用しうる住宅を構想し実現した著者の熱い思いに圧倒された。もちろん、ただたんに自分なりの思いを達成させたいために、足掛け7年もかけて、著者は自宅を作り上げたわけではない。そこには、押し寄せる生活危機の実相を警告したいという強い意思が貫かれているのだ。
 「戦後日本の住宅は、毒まみれの短命住宅に置きかえられてしまった。/戦後間もなく制定された建築基準法によって、日本の風土に合ったそれまでの技術が捨てられ、大量の住宅建築が行われてきたが、それは欠陥住宅だった。」(「まえがき」)
 戦後、わが国の林業は、農業と同じ運命を辿っている。
広大な木々に囲まれた列島にあって、豊穣な国産材を使わずに、安価という理由を建前に外材を大量に輸入して、「毒まみれの短命住宅」や「欠陥住宅」に住まわされてきたわたしたちは、なんともいえないアンビバレンツなものを背負い込んでしまったといわざるをえない。
 著者がまず、指摘するのは、木が持つ強度についてだ。つまり「木は伐られてからも生き続け、ゆっくりと強度を上げていく。一般に、500年ほどすると最も強度が上がってくる」という。一方、「鉄は製品になったときから酸化が始まり、急速に強度を失っていく」そうだ。
 輸入材に関していえば、「北米から輸入された土台や柱に多用されているベイツガは、シロアリに食われやすい材だ。(略)ベイツガはロッキー山脈の寒冷な気候に育ち、乾燥した台地に生育してきた。アメリカの乾燥したところで使用した場合は、100年も耐えうる住宅になる。しかし、湿度の高い日本で使われると、極端に弱い材になってしまう。(略)海外から輸入される材は、臭化メチルで消毒される。この薬剤は危険なので、農業分野では使用禁止になっている。さらに土台は、そのままではあまりにも腐りやすいので、CCA(銅・クロム・ヒ素の化合物)の猛毒を注入して使用している」と述べているのだが、これこそまさしく著者がいう「毒まみれの短命住宅」になってしまうことの証左だ。無知とは恐ろしい。輸入材は危険だとは、なんとなく知っていても、これほどだとは、誰も思わないはずだ。
 この国の政策は、戦後、アメリカの経済的植民地化のラインに立っていたことになる。米の減反政策などという本末転倒の生産調整をしてまで、アメリカを中心として食糧品目を多様に大量に輸入して、わたしたちの食生活を一変させた。今頃になって、やはりパンより米だなどといっても、時すでに遅いといえる。農業従事者は減少の一途を辿っているからだ。
 「日本にはあり余る国産材がある。建築材として有用なスギ・ヒノキの生長量だけで1億立方メートルもあり、およそ200万戸の住宅が建設できる量が毎年育っている。日本の年間住宅建設戸数は100万戸はど。これにアカマツやカラマツ、広葉樹も加わるので、十二分な供給可能量があることになる。」
 国産米、国産材というように自足すべき時が来ていることを、わたしたちは、認識すべきだし、そのことをもっと声だかに主張すべきだと、本書を読みながら思った。
                  (フリーライター・山井 悟)

書評 食べもの文化 2010年10月号(No.422)

 本書は、関東森林管理局(旧前橋営林署)で長らく樹木たちとつきあってきた著者による、「こだわりの家作り」奮闘記である。
 戦後の建築基準法のもとで建てられた住宅は、せいぜい20〜30年しか持たない。ローンが終わる頃には壊れてしまうのだ。そんなものは「家」とは言えない。おまけに「シックハウス」である。オーストリアで築500〜600年の木造住宅がゴロゴロしているのを見聞した著者は、自宅の新築を機に、これを徹底追求しようと心に決めた。
 木材のうま味をそっと引き出し、活かしきる。そのため、樹木の生命活動が不活発になる冬の新月時に伐採し、自然乾燥させる。その材を手刻みして、木栓で結ぶ。そこに、これまた新月時に伐った竹で小舞をかき、土壁をつけ漆喰で包みこむ。日本の伝統的な木造軸組工法である。
 このように、「木」への徹底したこだわりを通じ、ときにはみずからも伐採・建築作業に加わり、あれこれ試行錯誤しながら目指した「100年住宅」。材の伐採から家の造作にまでこだわり続けるうち、何と「500年住宅」までもが見えてきた!

書評 セミナー(JR労組政経フォーラム)2010年9月号(No.112)

 『こうすればできる100年住宅』を読んで

 第238回政経フォーラムで「困った時の炭だのみ」と題して講演を戴いた宮下正次さんが「こだわりの家造り」の本を出されたので興味深く読ませて戴きました。宮下さんは、関東森林管理局を退職するまで、仕事の傍らマッターホルン北壁に登頂するなど、世界中の山々を歩きながら自然の大切さを感じる一方、年々破壊され続ける自然を守ろうと、自ら「森林(やま)の会」を組織し環境保全活動を実践しながら、自治体や林野行政に対する問題提起と自然を守り広める運動の大切さについて長く訴えてこられた方です。
 宮下さんのこだわりは、第一に健康で過ごせる家でなければならないことを前提にして、危険な建材ではなく強度の高い国産材を使用した伝統工法による本物の木と漆喰の建築を行ったことです。
 その「こだわりの家づくり」をのぞいてみると、本の中で紹介されている「100年住宅」にする木材を得るには、冬伐り(木を切り出すのは11月から1月半ばまでの木が休眠して水を吸い上げない期間が良い)、それも新月伐り(満月と新月の間は木の活性が下がりデンブンが無くなり長持ちする)した長持ちする材を自分で確認して準備するのだそうです。そして、なんと家を造るために山を一山買ったというのです(山を買うことはそれほど高く難しいことではないそうです)。その理由は「自分自身が使う木材を自らの眼で確かめ、自らのイメージに合った材を使いたいから」というではないですか。その話からも宮下さんの家造りへの気合いと本気を感じさせられました。
 その他にも床下に炭を敷き詰めて除湿し室温を安定させること、襖に粉炭を入れること、漆喰に無農薬栽培の稲藁を練り込んで強度を上げ炭で微生物を活用すること、基礎石には御影石を使って水を遮断すること、土台には腐りにくい栗の木を使うなど、建築の基礎知識のない私には全てが驚きの連続でした。
 これらはほんの一部であり、その他にも色々な建材の危検性について現在の日本のハウスメ−カーによる大量生産大量消費の短命住宅造りに騙されないように、様々な角度から自ら学び、正しくないことを指摘されています。そして、先人たちが昔から日本で伝統的に創造してきた、日本の気候と風土に合った知恵と技や、オーストリアの500年も持つ家造りなど、海外に学んだ建築を参考にシンプルな切妻の長い軒にするなど、100年住宅を建設するための興味深い内容が豊富に紹介されています。
 またその一方で、様々な角度から環境への問題を提起されています。これまで日本は外国から木材を輸入し続け、世界の森林を破壊してきましたが、日本の山には世界に類を見ないほど人工林があり、これを国内で使えば日本の山を元気にし、同時に世界の森を守ることになると宮下さんは訴えています。クリ、アカマツ、ケヤキ、杉、檜などの国産材は、世界的に見てもトップクラスの強度を持つそうです。国産材を使い、伝統工法で建てれば「1OO年、200年、あるいは500年も持つ住宅」ができるそうなのです。
 宮下さんの実家は築300年の茅葺きで、黒光りするケヤキの大黒柱に手斧(ちょうな)削りの太さが50センチもあるアカマツの梁が載っているといいます。そんな家で育ち「こだわり」を持って家造りを構想し、2004年に最初のマツを伐ってから今年1月の完成まで6年の歳月をかけて「木材・建材」を選んで建てた家は、いつまでも離れたくない居心地の良さだぞうです。家造りを通じ環境をも同時に考えるべきだと問題提起していると感じました。
 このように長年の山仕事の経験と世界中の自然から学び本物の木にこだわり、健康で長持ちする家を造るための、正に宮下流の家造り哲学が伝わってきます。
 私自身も10数年前に家造りを経験しましたが「出来うるならもう一度家造りをしたい」と考えさせられました。当時はあまり考えず、間取りなどの形だけで素材などへのこだわりも全くない中で勢いだけで作ったのが現実でした。この本を読み、家造りのみならず、自然に向き合うことの大切さ、本物を見る眼や姿勢、そして人間としての生き方にも参考となる一冊であると思います。家造りを考えている方も、またそうでない方も宮下さんの哲学を感じていただければ幸いです。
 木材のうま味をそっと引き出し、活かしきる。
 そのために冬の新月に木材を伐採し、自然乾燥させる。
 その材を手刻みし、木栓で結ぶ。
 そこにタケで小舞をかいて、土壁を付け漆喰で包み込む。
 炭を土壁、襖、天井、床下、地面に入れました。
 「木」への徹底したこだわりを通じて「500年住宅」までもが見えてきた。
 「こだわりの家」の空気はしっとりとし、いつまでも離れたくない居心地です。
                 (上野運転区分会・斉藤 仁)

書評 日刊ゲンダイ 2010年7月26日付

 火災でわかる伝統の木造住宅の強度

 日本の伝統の木造住宅。その強さはたとえば火災のときにわかる。鉄は700度で変形が始まるため、鉄骨住宅はおよそ5分で強度半分、7分で家が潰れて15分で溶ける。アルミはわずか5分。ところが木材は20分経ってもまだ5割の強度を残し、芯までは火を通さないのだ。そんな木の家を建てるにはどうしたらいいのか。
 本書に安易な入手法や提供法は書いてない。著者自身が木を選び、大工に頼んで群馬県高崎市に自宅を建てたときの体験に基づき、「よい木材」とは何か、「よい木材住宅とはどのようなものか」を読者にもシミュレーション的に体験させてくれるのだ。長年森林管理局に勤務した著者はいわば "木の達人"。
 しかし、その人にしてから木造住宅を造る難しさと楽しさはひとしおだったようだ。たとえば基礎に使うコンクリートの強度にもこだわり、一般的な住宅用より3倍近く上の強度を持つスーパーコンクリを使ったという。そこまでしてこだわるのも、築300年の農家に育った子ども時代の記憶と日本の伝統文化への愛着ゆえ。見上げたこだわりだ。

書評 週刊金曜日 2010年10月22日号(No.820)「本箱」

日本の住宅寿命は他国と比べ短命だ。木材を自然乾燥させ、組み上げ、土壁をつけ漆喰で包み込む。「500年住宅」も見えてきた、と著者は書く。