ホーム
サイト内検索

抜粋 まえがき

 「日本の中高年は世界一、長生きでお金持ちであるが、幸せではない」
ショッキングな言葉であるが、事実である。日本人の平均寿命は81.9歳と、世界一の長寿である。日本人1人平均の金融資産総額は1200万円あり、中高年でみれば平均の2倍近い資産を保有している。一方、日本人の自殺者は年間3万人以上で、60歳以上の自殺者は全体の3分の1にも達している(第1章1参照)。

 戦後のベビーブームに生まれた団塊世代の大量退職が始まっている。
彼らは、日本の経済高度成長を支えるために企業戦士となって必死に働いてきた。そして奥方たちの多くは、家事・育児を一手に引き受け、「会社人間」の夫を支えてきた。「定年お疲れ様」と言いたいところであるが、「定年後は豊かな第二の人生を」と夢見てきた夫婦を待っていたものは、100年に1度といわれる未曾有の世界同時不況である。日本経済も大幅な経済収縮は避けられず、倒産や事業縮小などによる賃金低下や失業が続くであろう。そうなれば、都会でも第二の職場探しは難しく、高齢者を支える医療、福祉、年金なども安泰というわけにはいかない。
 そんなご時勢のせいなのか、「田舎暮らし」を夢見る中高年が多いようだ。それを見込んでの「田舎暮らし」を謳歌する単行本や別荘地購入を勧める不動産情報も氾濫気味である。なかには、村おこしとしての「まじめ」な情報も、「田舎暮らしはつらかった」といったネガティブな本もあるが、大方は、「田舎暮らし」の実体験の少ない物書きの文学的作品、もしくはリゾート会社ご推薦の「バラ色の体験談」のたぐいである。

 私たち夫婦は団塊世代の数年先輩であるが、敗戦後の何もない時代から世界第2の経済大国にまでになった日本の激動のなかで、団塊世代のちょっと先を生きてきた。
そして私たちの半生は、日本の北から南までの農山村で「田舎暮らし」を体験し、海外では貧しいながらも森と共生しながら喜々として生きる発展途上国の人びととともに汗を流してきた。
 私たちは13年前に、「定年後は高原の森でロハスに生きること」を決意し、那須高原の雑木林に終の棲みかを構えた。最初は東京での仕事があった私が「週末は田舎暮らし」をし、定年退職後は都会生活と縁を切って高原の森で「ロハス」をエンジョイしている。
 私は自称「森の与作」と言っているが、かつての肩書きは「地球自然環境専門家」であった。いわゆる「物書き」ではないが、私にはこれまで歩んできた農山村での仕事と生活、ロハスな生き方をしている途上国の人たちとの交流、地球自然環境専門家としての国際協力活動から学んだ反省と教訓、那須高原での地についた生活実践がある。この期にさいして、都会に住みながら田舎暮らしを検討している中高年夫婦のために、自らの思いと体験を伝えたいとしてこの本を書く決意に至ったものである。したがって、この本の執筆は、わが職業人生訓「住めば都・人類皆兄弟」の集大成からの中高年の方々へのボランティア活動のつもりでもある。

 本書は全5章で構成されている。
 第1章は、「なぜ『定年後は森でロハスに』なのか」について、なぜ「定年後」にこだわるのか、なぜ「田舎暮らし」ではなくて「森暮らし」なのか、なぜ「ロハスに」なのかについて、地球自然環境専門家の視点と実践からの信念を述べている。
 第2章は、「ロハスな森暮らしへの助走」と題して、那須高原を選んだ理由、エコにこだわった家づくり、完全永住に至る経緯、ひと足先に永住した妻の暮らしぶりなど、森暮らしの助走段階の実践を紹介している。
 第3章は、「高原の森でロハスの実践」と題して、那須高原の自然環境と生活実態、多様な趣味の世界、地域との交流やボランティア活動など、定年後の那須高原での森暮らしの実践的体験を紹介している。
 第4章は、「ロハスな森暮らしのノウハウ」と題して、これから森暮らしを具体化しようとする方々への有益な情報と提言を述べている。これらは、「森暮らし」での筆者の失敗や反省からの教訓、そして地域の方々からいただいた多様な情報や知恵を折り込んだものである。
 第5章は、「森の中のロハスの達人たち」と題して、13年間の那須高原暮らしで親しくなった方々の中から、多彩な趣味でロハスな人生をエンジョイされている達人たちを紹介している。きわめてプライベートな情報と写真を提供していただいた達人たちに心から感謝を表したい。

 最後に、この本が都会の熟年夫婦のロハスな人生設計にお役に立てば、「地球自然環境専門家」および「ロハスピープル」として望外の喜びである。
2009年2月
            那須高原の森から
                      著者 増子 博 

書評 産経新聞(栃木版) 2009年10月24日

 田舎暮らしの極意を出版
 定年後は地球と一緒に

 東京から那須町に夫婦で移住し高原での森の暮らしを楽しんでいる元林野庁職員の男性が、田舎暮らしの極意などをつづった「定年後は森でロハスに」を出版した。ロハスとは健康と環境を志向する、いわば地球と地域と人に優しい暮らし方。自らの体験を通して森の暮らしの魅力や自然の素晴らしさなどを紹介しながら、定年を迎える団塊の世代らに「定年後の人生をロハスにリセットしては」とライフスタイルの転換を提言している。

 本の著者は、増子博さん(68)で、妻の比呂美さん(63)と那須町で暮らして丸14年になる。元林野庁職員で国内各地の営林局や国際協力事業団の森林環境専門家として海外にも勤務。農山村での仕事と生活、ロハスな生き方をしている途上国の人たちとの交流、那須での暮らしの実体験から「都会で暮らす中高年の人たちにロハスなセカンドライフを勧めたい」とこの本を書き上げた。
 増子さんは宇都宮大の出身で、那須町は学生時代にスキーなどで訪れ、愛着があり思い入れも強かったという。定年を前に家を建て当初は週末だけの暮らしだったが、現在は農作業や木工、ゴルフなどを通してセカンドライフをエンジョイしている。
 本書では定年後はなぜロハスなのか、また増子さんの那須高原での暮らし、失敗や反省からの教訓、多彩な趣味でロハスな人生を楽しんでいる仲間たち―などを紹介している。
 「住む環境と行動を変えることで価値観や生き方も変わる」というのが増子さんの田舎暮らしを通した思いで、「この本が都会の熟年夫婦のロハス設計にお役に立てばうれしい」と話している。
 なお、増子さんは4月にNPO法人(特定非営利活動法人)那須シニア・ロハス協会を設立。都会の団塊の世代などを対象にした那須への移住相談のほか、福祉支援の活動などにも取り組んでいる。