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抜粋 まえがき

私は釣りが大好きです。まだ小学校に上がらないうちから、父親に釣りに連れていってもらうのを何よりの楽しみにしていました。小学校に通うようになると、日曜日(当時はまだ週休二日制ではありませんでした)には毎週、同級生たちと朝早くから近くの川へ出かけて一日中釣りをしていました。まさに釣りキチ少年だったのです。
中学二年生の学校遠足で、乗っていたバスが当時東京都の日野市にあった淡水区水産研究所の前をたまたま通過しました。そのとき、やはり釣りの好きだった担任の先生がこう言ったのです。「きみは釣りが好きだから、こういうところに勤めたらいいのに」。「さかなの研究」という職業のあることを初めて知った私は、自分の進む道は「これだ!」と興奮したものです。
水産大学を卒業した後は、東京都水産試験場に勤め、奥多摩、小笠原父島、港区竹芝、伊豆大島の四カ所の研究所を巡りながら30年以上にわたってさまざまなさかなたちを研究してきました。ヤマメやアユ、コイなどの川魚を皮切りに、トビウオやハタ類、マグロなど小笠原の海に泳ぐさかなたち、マハゼやスズキ、カレイなど東京湾に生息する江戸前のさかなたち、イサキやマアジ、タカベなど伊豆諸島周辺の海に暮らすさかなたちです。もちろんこの間も、おのおのの勤務地で大好きな釣りを楽しんだことはいうまでもありません。
一方、こうした勤務のかたわら、私は釣り人を含む多くの方々から、さかなや水産に関するご質問をいただきました。
「ウナギは海で卵を産むそうですが淡水魚ですか、それとも海水魚なのですか?」
「サメは魚なんですか?」
「サケとマスはどのように違うのですか?」
「絶滅した東京湾のアオギスは復活しますか?」
「さかなの`旬aて何ですか?」
「アメリカやイギリスなどは捕鯨に反対していますが、クジラは保護しなくてもいいのですか?」
などなど、どれも難問ばかりです。
何枚もの便箋でお手紙を下さった方、また遠方から長時間熱心に電話を掛けて下さった方もありました。しかし残念ながら、日々の仕事に追われて十分にご説明できなかったことも多々あります。そして、そんな中で「みなさんが共通して持っている疑問」というのもある程度わかってきました。
この本では、自分の研究や釣り場での体験を通じて得た事柄を紹介しながら、これらの質問に「なるべくわかりやすく」お答えしようと考えました。原稿は釣り雑誌に掲載されたものをベースにしているので、釣りの場面がやや多いかもしれません。しかし、釣り人だけでなく、さかなやおスシを食べるのが好きな方にも楽しんでいただけるのではないでしょうか。また、川や海の自然を愛する方、食糧問題や地球環境に関心のある方にも読んでいただけたらと思います。そして親子で読んでいただければ、楽しい共通の話題が生まれるかもしれません。
とはいっても、これでさかなの世界もなかなか奥が深く、わかっていることはほんのわずかで、わかっていないことは無限に近いのです。
万有引力の法則を発見し、微積分法を発明するなど、自然科学の世界に数々の偉大な功績を残したかのアイザック・ニュートンは、「私のした仕事は、広大な砂浜の中から一つのきれいな小石を拾ったことにしかすぎない。私の前には広い浜辺と、さらに果てしない大洋が広がっていて、そこには無限の美しい小石が散在している」と言ったそうです。現在、過去を通じて、多くのおさかな研究者たちが一生懸命にさがし集めた「魚類学あるいは水産学という砂浜の美しい小石」を、少しでも読者のみなさんにお見せすることができたらと考えています。

2006年7月
著 者  

書評 子供の科学 2007年1月号

ギンブナは雄がいなくても子孫を残せる? 魚の目=フィッシュウィンドウはどうなっている? トビウオは何メートル飛べる? 魚の生態からおいしい食べ方まで(!)、魚についての素朴な疑問に答えてくれる1冊。この本を読めば、魚博士になれるかも?
(今年最初に読む本はなに? KOKA=子供の科学 的オススメ本)

書評 出版ニュース 2006年12月中旬号

小さい頃から釣り好きであった著者は淡水区水産研究所を見て、自分の進む道は「これだ!」と思い、水産大を卒業してからは東京都水産試験場に勤め、日々魚の研究に没頭してきた。
その間、さまざまな質問が寄せられたが、本書は自らの体験を通して知った事柄を披露しながら、これらの質問に答えたものである。タイトルとなったトビウオの飛行距離もその質問の1つ。答えは最大400メートルにも及び、誕生1カ月の稚魚もヒレを広げて飛ぶそうで、フランス製ミサイル「エグゾセ」もフランス語の「トビウオ」だという。その他、オスは不用という魚、さらには魚が再生可能な資源であることなどを分かりやすく説いている

書評 新しいつり 2007年1月号

東京都島しょ農林水産総合センター(旧・東京都水産試験場)の加藤憲司さんが表記の本を出版しました。
加藤さんは、1975年都水産試験場奥多摩分場に入職し、小笠原、港区、伊豆大島など4つの研究所で30年以上にわたって川や海の魚の研究をしてきました。その体験をもとに「魚は何年生きるのか」「淡水魚と海水魚はどう違うのか」「魚が感じる臭い、音、痛み」など24項目にわたって書いています。
表題にある「トビウオ」は、世界には50種以上、日本周辺にも30種以上生息していて、体長も10センチ内外から大型は50センチを超え、飛距離は大型の方が長く、アメリカの研究者の測定記録では400メートル・飛行速度は55キロ(本書125頁)にもおよぶそうです。
加藤さんはあとがきで「海や川の自然とそこに棲む魚たちを守り育てていくためには、漁師さんなど水産関係者たちだけでは絶対数が足りません。ですから、この間私は、釣り人や一般市民の方々にサポーターになってもらおうと考えてきました。…海や川とそれを取り巻く美しい自然、そして美味しい魚料理を楽しみながら、ぜひご一緒に大切な地球の資源を守っていこうではありませんか」と呼びかけています。

書評 FlyFisher 2007年2月号

著者は東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、東京都水産試験場に勤務。東京都の奥多摩、小笠原父島、港区竹芝、伊豆大島の4カ所の研究所を巡りながら、30年以上にわたってさまざまな魚たちを研究してきた。
中学校の遠足でたまたま水産研究所の前を通った時、学校の先生に「きみは釣りが好きだから、こういうところに勤めたらいいのに」と声をかけられ、「さかなの研究という仕事があるのか!」と興奮したという。
仕事のかたわら、多くの釣り人を含む人たちから、魚や水産に関する質問を受けるようになり、それらは分かりやすく説明しようとするとなかなか難しく、奥深い内容を持ったものも多かった。
「ウナギは海で卵を生むそうですが、淡水魚ですか? それとも海水魚ですか?」
「サメは魚ですか?」
「サケとマスはどのように違うのですか?」
「絶滅した東京湾のアオギスは復活しますか?」
「さかなの"旬"って何ですか?」
 知っているようで詳しくは知らない素朴な疑問の答えはもちろん、魚にとっての適水温、潮の満ち引きと活性、寿命、さらには魚の視覚(ものの見え方)といった基礎知識の解説も豊富。本人の職場や釣り場での体験も交え、分かりやすい言葉で平易に語られている。
海や川の自然とそこに棲む魚たちを守り育てていくためには、漁師や水産関係者だけでは絶対数が足りず、釣り人をはじめとする一般市民にもぜひサポーターになってほしい、それが筆者の切なる願いだ。
文中で紹介した疑問や、タイトルにもなっているトビウオの飛距離については、ぜひ本書を手に取って実際にご覧いただきたい。ちなみに、トビウオが飛ぶ速さは最高で時速55kmにも達するそうだ。しかも、稚魚のうちから羽の代わりになる胸ビレと腹ビレがかなり立派で、水面をピョンピョン飛ぶという。九州地方では、焼き干しにしたものがお正月の雑煮用だしとしても欠かせない、伝統的食材でもある。身近な魚種ひとつとっても、やっぱり魚の世界は知るほどに面白い。

書評 図書新聞 2007年1月27日号

 魚からはじまる進化史
 魚たちの様々な生態が明らかに

魚屋の店頭でサンマのすっと伸びた美しい姿に見入ってしまうことがある。まな板の上でアジのヒレを広げてみて、意外に大きいことに驚いたり、水槽の金魚の可憐な動きに惚れ惚れしたり…同じ生き物であるけれど、水の中でしか生きられない、なんとも不思議な異類、魚類。その生態は神秘そのものだ。
以前、夜店で掬ってきた金魚のキンコは、水槽をトントンとたたくだけでそばに寄ってくるようになったのに、ある朝、水槽から忽然と消えてしまった。一瞬逃げ出したのかと思ったが、そんなはずはなかった。ぴょんと跳ねて水槽の外に飛び出してしまったのだ。「そうだ、金魚は水の中でしか生きられないのだ」と思い知らされた、切ない思い出である。
しかし、「魚は異類ではない」とはっきりと知ったのは、三木成夫の『胎児の世界』を読んだときだった。「胎児は、受胎の日から指折り数えて30日を過ぎてから僅か1週間で、あの1億年を費やした脊椎動物の上陸史を夢のごとくに再現する」として紹介されていた受胎32日の胎児の顔の図、それはまさしく魚そのものだったのだ。人は羊水という海に浮かび、魚の段階を経て、両生類から爬虫類へと進化して海からの上陸を果たすのだということを知って、粛然とした気持ちになった。棲むところは水中と地上に分かれていても、魚たちはそんな進化のプロセス、生物の不思議な連帯感を伝えてくれる存在でもあるのだ。
東京都の水産試験場に30年以上勤務してきた著者だけに、「性転換する魚たち」「淡水魚と海水魚はどう違うのか」「海と川を往復する魚たち」「トビウオは何メートル飛べるか」「魚はどのようにものを見ているか」など、興味津々のテーマがずらりと並び、魚たちの様々な生態が次々に明らかにされていく。
魚の種類は2万7000余種、そのうち淡水魚が1万2000種ほどだそうだ。地球誕生から今日までを1年のカレンダーに当てはめると、海と生命の誕生が2月(40億年前)、植物と動物の分化が9月(12億年前)、魚類の出現が11月中旬(4億5000万年前)、哺乳類の出現が12月中旬(2億年前)、そして人類の出現は12月31日に当るのだそうだ。人類はほんの新参者、魚は大先輩なのだ。
海だけ、川だけでなく、海や川を往復する魚もいるし、卵生と胎生もある。体長からヒレの形まで実にさまざまだが、その一つ一つが地球の環境変化に対応して進化を遂げてきた生きた証しである。金魚のキンコは水槽から飛び出して死んでしまったが、魚の中には空中に飛び出すものもいることを忘れていた。本書のタイトルにもなったトビウオである。
トビウオは胸ビレを広げてグライダーのように滑走する。「一般には大きな魚やイルカなどの外敵から逃れるために飛ぶのではないかといわれてい」るそうだが、著者はそれに疑問を呈している。そんな状況に遭遇したことがないのだそうだ。それだけ、魚の生態は謎に満ちているということだろう。
トビウオを孵化させると、仔魚は1ヵ月程で水面をピョンピョン飛ぶようになるという。きっと、魚の中でも鳥にあこがれた冒険者たちの遺伝子が寄り集まったに違いない。そればかりか、体表の水分さえ乾かなければ、空気中に出て暮らせる魚さえいるそうだ。
「1960年代から70年代にかけて、日本では大気や水質汚染などの公害が大きな問題となりました。この時期に東京湾の多くの干潟は埋め立てられ、江戸前のアオギスやハマグリは絶滅してしまいました。しかしその後も懲りることなく長良川の河口堰がつくられて、アユやサツキマスの遡上を妨げています。諌早湾では干拓が進んでムツゴロウやタイラギが激減しています。そしてさらにいま川辺川ダムの計画によって、大形アユの名川が姿を消そうとしています。海や川、そしてそこに棲む魚たちの資源が危機に陥っている状況はまだまだ続いているのです」
著者は、本書の中ではあくまでも魚類の知られざる生態についてわかりやすく語ることに徹し、最終章でごく控えめにこのように訴えるにとどめている。しかし、この言葉は河川や海の汚染について声高に語る物言いよりもずっと重い、そして深々と胸の奥に届く。魚類は「わかっているのはほんのわずかで、わかっていないことは無限に近い」人類の大先輩だが、私たちが魚だった頃の記憶はきっと細胞のどこかで息づいているに違いないのだから。
甲野糸子(フリーライター)

書評 朝日新聞多摩版「ブック多摩」 2007年1月21日付

 魚の疑問はこれで解消

筆者の加藤さんは都島しょ農林水産センター(旧・水産試験場)の職員。奥多摩や東京湾などで30年以上、魚類研究を続けている。本では、魚釣りや店頭での魚選びにも役立つ素朴な疑問に答えている。
例えば、魚の生息に適する水温。種類によって適温域があり、その水温幅もそれぞれで、高温ほど活動的になるという。そのため釣りたい魚の生態を調べるには、適水温の情報は欠かせない。ほかにも、死んだ魚のうまみ成分が最も増す時期、トビウオはどのぐらいの距離を飛ぶのか、釣り針に痛みを感じるのかなどに実体験を交え答える。
専門知識のない素人から釣り好きな玄人まで読める。「センターに寄せられる様々な疑問を1つひとつ思い出しながら、わかりやすく回答をまとめました」と加藤さん。

書評 夕刊フジ 2006年12月26日付

小学校入学以前から釣りに魅せられ、水産大学卒業後は東京都水産試験場に勤め、30年以上さまざまな魚の研究をしてきたという筋金入りの魚好きな著者による、読みやすく分かりやすいお魚あれこれ本。『月刊つり人』に連載された原稿を大幅に改稿したものである。
アカハタなどのハタ類は小さい時はすべてメスで大きくなるとだんだんオスに性転換するとか、関東地方のギンブナにはメスしかおらず、ギンブナの卵にドジョウやタナゴなど別種の精子をかけても産まれる子どもはすべてギンブナになってしまう…など、思わず「へえ〜」な魚に関するトリビアが満載。
表題のクイズの答えはアメリカの博士の測定によると「最大飛行距離400メートル、飛行速度は時速55キロ」だそうだ。

書評 インターネット新聞 JANJAN

ツルはなぜ1本足で眠るのか、とか、カブトムシのツノは何のためにあるのか、とか、アサガオのツルはなぜ左巻きなのか(アサガオだけでなく、植物のツルはたいてい左巻きということです)、生き物の世界の不思議についての興味は尽きないものです。宇宙の話も好きですが、私はこのような自然の「なぜ」が少しでもわかる本が大好きです。
この本は、魚博士が魚について書いた本であることは、そのタイトルからもすぐわかります。
改めて「魚の世界」も何と広いことか、その奥深さを感じさせてくれます。
著者は、東京都水産試験場(05年に「島しょ農林水産総合センター」に改称)の職員。ご自身は釣りが大好きで、この本の中にも釣りの話も出てきます。釣り好きの人にとっても取っつきやすい本と言えるでしょう。
この本では、現場の漁師さんから聞いた話も出てきます。毎日魚に触れ合っている漁師さんから聞く、魚の生態についての情報が大切なのだ、ということをも教えてくれる本です。
私のようなシロウトでも、淡水魚と海水魚があること、肺魚という肺呼吸する魚がいることは聞いたことがあります。水族館で見たこともあります。
それでは、魚は地球上に何種類くらいいるのか、おならをする魚を知っていますか。サケとマスはどのように違うのか、サケは川で生まれて海に下るというが、それでは、サケは淡水魚なのか、海水魚なのか、あなたは知っていますか。そして、この本のタイトルにあるように、トビウオはなぜ空を飛ぶのか、何メートル飛ぶのか、知っていますか。
また魚には、たいていはエラがついていますが、これも魚の種類によってその能力に違いがあるといいます。背びれにだっていろいろあるのです。
それらの違いは何によるのかなど、知りたいことは次々出てきます。
魚は味を感じることができるのでしょうか。においは? サメが血のにおいを嗅ぎつけて、餌に寄ってくるという話を、どこか読んだか聞いたかしたことがあります。どんな魚でも味覚や嗅覚はあるのでしょうか。
魚にはまた痛覚はあるのでしょうか。釣り針に引っかかった魚は痛くないのでしょうか。多くの疑問に対して答えを準備してくる、著者の誠実さが伝わってくる本でもあります。
中学生くらいからなら読みこなせる楽しい本です。
(中野生弥)(http://www.janjanblog.jp/user/book/hondana/8198.html)

書評 しんぶん赤旗「ほんだな」 2007年2月4日付

トビウオの飛ぶ距離を測定した博士がいること自体が驚き。飛行速度は時速55キロ、最大飛行距離は実に440メートルです。卵からふ化して1カ月目の赤ちゃんですら水の表面をピョンピョン飛び出すというからほほえましい。魚は何年生きるのか、何を見ているのか、など興味深い魚の世界を紹介。海や川は「地球の大切な貯金箱」と、その保護を呼びかけています。

書評 週刊つりニュース 2007年2月16日付

本書「トビウオは何メートル飛べるか」の著者・加藤憲司氏は、東京都島しょ農林水産総合センター(旧・東京都水産試験場)に30年以上勤務し、魚たちの研究を続けている。
大の釣り好きでもあり、勤務のかたわらも釣り人から、「ウナギは淡水魚か海水魚か」、「東京湾のアオギスは復活するか」など、魚に関するさまざまな質問を受けた。
そうした数々の疑問、難問に、釣り人のみならず、魚の知識があまりない人でもわかりやすく読める1冊。

書評 遺伝 2007年3月号

トビウオは何メートル飛べるか? 魚から見ると陸上はどのように見えるか? いつ魚を釣れば一番よく釣れるのか? 魚を買うときの鮮度の見分け方は? など素朴な魚の生態から、日常生活に登場する魚の疑問まで、幅広い話題を楽しく提供してくれるのが本書である。著者は東京都の水産試験場に勤めながら、ヤマメやアユなどの川魚から、マグロやトビウオといった小笠原の海の魚、またスズキやカレイなどの江戸前の魚を30年にわたって研究してきた。その経験から、「トビウオは少なくとも7〜8秒間は飛んでいるのを見た」というような実体験に基づいて解説がされており、魚類学・水産学のわかりやすい入門書となっている。また、筆者と同じように釣り好きや魚料理が好きな人にとっても、大いに役立ちそうな本である。
海や川から食卓に至るまで、さまざまなテーマを取り上げているが、なかでも興味深いのは、魚たちの産卵時の戦略であろう。成長するとメスからオスへと性転換するアカハタや、別種の精子にもかかわらず卵の細胞分裂が始まるギンブナなど、多様な産卵期や卵自体の適応戦略が紹介されている。記録されているだけでも27,000種もいるといわれる魚類は、それぞれの環境に適応した巧みな戦略を進化させており、まだまだわかっていないことばかりのようだ。
また一方で、魚の寄生虫を食べても大丈夫か? どんな毒魚がいるのか? といったなかなか興味の惹かれる話題も数多くの写真やイラストとともに提供される。魚好きであればぜひ一度は読んでおきたい。
                         (編集部)

書評 養殖 2007年3月号

オスは不要という恐ろしい(?)魚、性転換する魚、淡水でも海水でも気にしない魚、毒を持つ魚…。魚の世界も色とりどりである。
著者は、これまで東京都島しょ農林水産総合センターの奥多摩、小笠原、港区、伊豆大島の研究所を巡りながら、東京の川や海の魚たちを30年以上にわたって研究してきた。その勤務かたわら、多くの人から魚や水産に関する疑問を耳にしてきた。「魚は痛みを感じているか?」、「トビウオは何m飛べるのか?」など。本書は、そんな魚にまつわる数々の疑問に答えてくれる。
魚類学・水産学の入門書としてだけでなく、釣り人や魚が好きな人へ向けた雑学書としても楽しめる1冊だ。

書評 自治体の仲間(自治労連) 2007年4月号

今この仕事に誇りと働きがいを(29)
海や川は地球の貯金箱

 中学校の遠足でたまたま水産研究所の前を通った時、学校の先生に「きみは釣りが好きだから、こういうところに勤めたらいいのに」と声をかけられ、「さかなの研究という仕事があるのか!」と興奮したという加藤さん。子どもの頃の夢を持ちつづけ、1975年に東京都に入職し、奥多摩、小笠原父島、港区竹芝。伊豆大島の4カ所の研究所を巡りながら30年以上にわたってさまざまな魚たちを研究してきました。今年3月まで伊豆大島に勤務。4月からは奥多摩に異動が決まっています。

よみがえれ ふるさとの川と魚たち
 70年代、東京の川や東京湾が「死の川、死の海」と呼ばれていた時代に奥多摩の研究所に勤務し、マス類の養殖や淡水魚の生態などを研究し、海や川の自然とそこに棲む魚たちを守り育てるとりくみに力を入れてきました。自然の再生をめざして発信した『よみがえれ ふるさとの川と魚たち』(リベルタ出版、2000年刊)の著書は今回刊行した姉妹編にあたります。
 机上の研究だけではなく、海洋観測船に乗り込み、船員さんらとともにカツオやカジキを釣り、キンメダイなどの資源調査を行うなど、海洋資源の開発と研究を進め、漁師さんらとの信頼関係を大切にしてきました。1カ月以上も海洋に出ることもあるそうです。それだけに、生の魚に触れ、さまざまな魚に関する質問にも答えられるようになったといいます。

トビウオは何メートル飛べるか?
 さて、この本は魚の適水温、魚の視覚、痛みはどう感じるのか、美味しく魚を食べるには、など体験も交えてわかりやすい言葉で解説しているのが特徴です。
 トビウオは世界に50種類以上、日本周辺に30種類以上生息し、大型は50センチを超えるといいます。飛ぶ距離を測定したのはアメリカのハブス博士で、最大飛行距離は400メートル、時速55キロにも及ぶとされています。実はハブス博士は加藤さんの先生の先生にあたり、以前まとめた論文を博士に贈り、そのお礼状が今も職場の机に大切に飾ってあります。
 「海や川は、私たちにとって豊かな水産物と釣りなど楽しみを与えてくれる素晴らしい貯金箱なんです」と語る加藤さん。「再生産が可能な大切な地球の資源を守りましょう」とメッセージを発信し続ける加藤さん、子どものように純真な笑顔がさわやかです。