レビュー 出版ニュース 2017年01月上旬号

「シューカツ」の話をしよう

 田悟恒雄
 日本出版者協議会理事(リベルタ出版)

 昨今、就活、婚活、育活、終活…と、世の中「○活」が大盛況である。ゆりかごから墓場まで、人は休むことなく「活動」することを強いられるらしい。そこで今回の話題は「シューカツ」。と言っても、ここで取り上げるのは、「小零細版元の終活」というものだ。
 若気の勢いで起業したに違いないと思われる小零細版元の面々だが、構造的出版不況の荒波に翻弄され喘ぎ苦しむうち、ふと気がつけば、「還暦」だの「古希」だのといった声の掛かる歳格好になってしまった。「往きはよいよい帰りは怖い」で、それにどういう結末をつけるのかが、じきに彼ら彼女らの重大関心事となってくる。
 経営存続問題というのは小規模経営どこもが思い悩まされる難題だが、そこには出版界固有の問題もある。そんなことを考えてみようというのも、あと数年もすればこれが業界喫緊の大問題となるのは必至、と思えるからだ。
 かつて「出版は机と電話があれば…」などと言われた時代があったように、出版業というのは、他業種に比べ、少ない軍資金で比較的容易に立ち上げることができた。
 もちろんスタート時には、取次店をはじめ関連業者との取引関係など、煩わしいことは山ほどあるが、そこをやり過ごしてしまえば、あとは比較的少人数で回していくことも可能だ。だが、裏を返せば、そのことが後継者問題を厄介なものにさせているとも言える。
 そして「多品種少量生産」を地で行く小零細版元は、小なりといえど、いつの間にか身の丈にそぐわぬほどの在庫の山を築き上げている。しかも厄介なことに、あまり売れる見込みのなさそうなものであっても、それは立派な「文化財」なのだ。このことだけは、胸を張って言ってもいいだろう。
 だから、首尾よく次代に引き継げず、いよいよ店を畳まなければならなくなっても、読者や著者、書店や取次の人々の顔がちらついて、いきなり「ハイさようなら」で済ませてしまうわけにもゆかない。負債の整理は言わずもがなだが、手持ちの在庫をどうするかで、大いに頭を悩ますこととなる。
 そこで、「文化財の保護」などと言えばおこがましいのだが、近い将来に予測される廃業版元の急増といった事態にどう対処すべきか、出版界は十分考えておく必要があるだろう。
 その受け皿として、たとえば版元横断的な販売会社あるいは協同組合をつくるというのはいかがだろう? 廃業を余儀なくされた何社かの比較的優良な在庫(リビングストック)を一定部数引き受け、その継続販売に当たるのだ。
 新たに取次口座を開設するのが難しければ、既存の版元にこれを委ねるという方法も考えられよう。あるいは、在庫を集約的に保管しておくことが困難であれば、各社個別に保管し、取り寄せるといった形も考えられなくはない。
 その他、各社まちまちな取引条件の調整等、クリアしなければならない課題は多々あるが、小零細出版人の衆知を集めて、実現できないものだろうか。
 これはあくまでも、「文化的な資産」を絶やさないというのが眼目だから、必ずしも「紙の本」である必要はない。さしあたっては在庫本の販売継続に重きを置くとしても、先々は、デジタルデータとして保存・集積していく方が得策ということになるのかもしれない。
 以上、思いつきを並べ立てただけにすぎないが、しかるべき時に備え、いまからしっかり考えておきたいものである。