back number 2017-01(January)

ロウバイは「臘梅」って書くんですね(17.01)

01/31 3・11から間もなく6年になるきのう、ようやく福島第一原発2号機の格納容器内にカメラが入り、圧力容器下のグレーチング(金網状の作業用足場)の上に、黒い塊のあることが確認されました。
それがデブリ(溶け落ちた核燃料)なのかどうかは未確認ですが、少なくとも、これまで言われていたように、核燃料の大部分は圧力容器の中に残っているのではないかという「希望的観測」が、消え去ったことだけは確かでしょう。
つまり、核燃料の取り出しに成功した米スリーマイル島原発のケースとは違い、30年経ったいまもデブリ取り出しの見通しも立っていない旧ソ連・チェルノブイリ原発と同じ話になるわけで、今後の廃炉作業はますます困難を極めるに違いありません。
そんなとき、原発ゴミはどこへ行くの中で倉澤治雄さんが打ち鳴らしている警鐘が、ふと脳裏によみがえりました─。

「あたかも東電福島第一原発事故などなかったかのように、『再稼働』の議論が進んでいる。…原発の運転を続けることは、『原発ゴミ』をこれからも積み上げるということだ。果たして私たちは、本当に原発を続けていく覚悟があるのだろうか?
『事故のリスク』に晒され続ける覚悟、大量の『原発ゴミ』とほぼ永遠に共存する覚悟、費用負担を続ける覚悟、そしておそらくは100年以上にわたって、憂うつな『廃炉の季節』を過ごす覚悟。『覚悟』なき『再稼働』は、間違いなく、ツケを次の世代に回すことになる。その意味で問われているのは、私たちの良心なのである」(同書、pp. 253-254)。

01/30 東京MXテレビの報道バラエティー番組「ニュース女子」が、あちこちで槍玉に上がっています。問題になっているのは、1月2日放送の「沖縄基地反対派はいま」。
番組のスポンサーは大手化粧品会社DHCで、その子会社「DHCシアター」が制作し、東京・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏らが司会を務めています。
1月13日の「ハフポスト」によると、番組の中身は次のようなもの─。

「沖縄・高江地区のヘリパッド建設現場での反対運動について、ジャーナリストの井上和彦氏が『運動家の人たちが襲撃してくるということを言ってるんですね』と述べたり、普天間飛行場の周辺で『2万』と書かれた茶封筒が見つかったとして『反対派は日当をもらってる?』『反対派の人たちは何らかの組織に雇われている?』などのテロップやナレーションが流れたりした。」

さらに、ヘイトスピーチや人種差別に対抗する団体「のりこえねっと」が、「高江特派員」を募り、カンパで交通費などを支給したことを、「反対派が金銭目的で運動に参加している証拠」と、意図的にねじ曲げたり、果ては「韓国人がなぜ反対運動に参加するのか」などと「ヘイト」まがいの発言を公共の電波に載せたのです。
放送法第4条は「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」することを求めていますが、そのような批判に対し番組制作会社は、「犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はない」と、まるで聴く耳を持たぬよう。
何の根拠もないトランプ張りの「虚偽情報」や「ヘイトスピーチ」がこれだけ堂々、公共の電波に横行するとなると、ますます心配になるが、この国の行く末。

01/27 「もう七並べやババ抜きは飽きたぞー」と言われるのを承知で、きょうも「トランプ」。というのも、けさの毎日新聞のインタビュー記事「トランプ米大統領/演説 どう評価」が、とても面白かったものですから─。

「トランプ氏の言葉は確かにわかりやすい。米国の小学5〜6年生程度…文章は短く、日常会話でも使われるやさしい言葉なので大衆受けはする。…複雑な世界を単純化して、断定的な口調で語れば力強く聞こえる。エリートぶって偉そうに言うより、誰にでも分かる言葉で力強く語ったのを好意的に見た米国民もいたと思う」(立教大名誉教授・鳥飼玖美子さん)。

ギョッ、それで零細出版人にも米語がすんなりわかったのでした。なーんだ、ちょっぴり残念。でも、いくらわかりやすくたって、言ってる中身が肝心。鳥飼さんは、こう締め括ります─。

「空虚な言葉を力強く語るだけでは米国の大統領職は務まらない。米国が今後どこに向かうのか、さらに不安になった」と。まったく同感。
また、「芸人」パトリック・ハーランさんの評価も手厳しい─。

「トランプ氏の演説は確かに一定の支持者をひき付けたかもしれない。だが、それは相手側を攻撃することで自分たちの立場を担保する『悪の話術』で盛り上がっているだけだ」と。

一方、フリーアナウンサーの生島ヒロシさんは、「語る速度が極めてゆっくり」「ジェスチャーを多用」「間の取り方」の3つの特徴を引き出し、もっぱら話法のテクニカルな面から、「どれを取っても申し分ない」と絶賛しています。
でも、そんな向きには、メディア・リテラシーの方法のいくつかの章をお読みいただき、「見掛け倒しの政治家などにうっかりノセられない」(本の帯コピーから)ようにしていただきたいものです。

01/26 アレ本気だったんですね、びっくり。私ゃ、てっきり「こけ威し」じゃないかと睨んでいたのですが、鼻息荒いジャイアンのこと、そんな芸当すら持ちあわせていないよう。
「現代の始皇帝」さながら、とうとうメキシコ国境に「万里の長城」を築く大統領令にサインしてしまいました。前の晩からツイッターで、「明日は国の安全保障で大きな日になる。とりわけ壁を造る!」なんて大はしゃぎしていたのですから、いまさら驚いてもいられないのですが。
それにしても、あの身勝手な振る舞いには空いた口が閉まりません。世界的な風潮としての「反知性主義」も、ついにここまできてしまったのか、と。
そんなことをつらつら考えていたところ、こんどは永田町の方から、「反知性主義の風」が吹いてきました─。

 「訂正でんでんというご指摘はまったく当たりません」

きのうの参院代表質問での、民進党・蓮舫代表の質問への首相答弁です。一瞬、新横綱がよく口にする難しい四文字熟語のたぐいかとも思ったのですが、あっ、そうか、「云々」の読み間違えじゃないのか!? いつもお隣にいるお方の「ミゾユーウ」(未曾有)と似たようなものですね。 

01/25 米新大統領トランプ氏の立ち居振る舞いを見ていると、何だか「ドラえもん」に出てくるジャイアンのようです。きのう始動した新政権はさっそく、原っぱの土管ならぬ「黄金の間」から、「のび太いじめの大統領令」を発しました。
「TPPからの永久離脱」はまあよしとして、その代わりに「二国間の貿易協定を目指す」そう。そして、事のついでに─、

「日本との自動車貿易は不公平だ。…われわれが自動車を売る際、日本が販売を難しくしている。だが、日本は米国で多くの自動車を販売している」と。

でも、それは「乱暴な言いがかり」というもの。事実はまるでアベコベで、日本は1978年に米国車に対する関税を撤廃、米国は今でも日本車に2.5%の関税をかけているんです。
ところが、ジャイアンにそんな横車を押されても、一向に毅然たる態度をとれないのが、われらが「のび太」くん。2月に(勝手に)見込んでいる「ジャイアン詣で」のさいに、わざわざ "アンメリカ・ファースト" を「理解し、尊重する」と伝える意向を固めた、と伝えられます(共同通信)。
ああ、何とも情けない話じゃないですか。おとといまでは、ジャイアンが頻繁に発する「140文字」に右往左往し、きのうからは、「大統領令」に恐れおののき、ひたすら「どうしたら気に入られるか」ばかり考えている─。これを、「植民地根性」と人は言うんじゃなかったかしら。

01/24 米アカデミー賞監督・オリバー・ストーンさんが、「トランプ大統領もあながち悪くない」とやっています。(朝日新聞、24日付オピニオン欄インタビュー)。
新政権の基本政策もまだはっきりしない状況ですので、監督の発言の真意も、「トランプを良い方向にとらえよう」といったあたりなのかと思います。
そして、監督が最も期待しているのが、「米国が "世界の警察官" をやめる」こと。というのもトランプ氏は、「イラク戦争は膨大な資産の無駄だった」と明言しているし、「『アメリカ・ファースト(米国第一主義)』を掲げ、他国の悪をやっつけに行こうなどと言いません」というわけです。
それでホントに「米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させるなら」、私らにとっても「すばらしいこと」になるに違いありません。
でも、どうでしょう? 「 "アンメリカ・ファースト" は早晩、他国の "国益" (="自国第一主義" )とぶつかることになる」のではないでしょうか? となれば、「グレイト・アンメリカの "国益" を守るため」とか言って、米国はまた、「他国の悪をやっつけに行く」ことになりゃしませんか?
新大統領の好戦的な姿勢を見ていると、零細出版人にはそう思えてしかたないのですが、だとすれば、「"グレイト・アンメリカ" は警察官をやめて押し込み強盗になる」ってことですね。

01/23 文科省の「官僚天下り」が問題になっています。何と、大学の設置認可やら私学助成やらを取り仕切る「高等教育局」の前局長が、取り仕切られる側の早稲田大学に職を得たというのですから、口あんぐり。
えっ、何々? と思って、くだんの前局長氏の名前を見て、2度びっくり。以前は文化庁にいて、「著作権法の権威」として広く知られていた人じゃありませんか!?
おまけに以前、零細出版人が、さる希少動物繁殖販売業者から「著作権法違反」のかどで訴えられたとき、その方の法理論解説論文などを参考にして本人訴訟の弁論を組み立て、おかげで訴えが棄却されたという、いわば「知的恩義」すら感じていた方だったのです。
ところが、そんな前局長氏を教授として招いた早大は、大学での教授の役回りを「政策の動向の調査研究」「文科省の事業に関する大学への助言」とかにしたそうです。どう見てもあまりに露骨。早大当局の魂胆は見え見えじゃないですか!? これで3度目のびっくり。
では、どうして「天下り」はなくなることが」ないのでしょう? 元経産官僚・古賀茂明さんによる以下の解説(『日刊ゲンダイ』)には、即納得─。

「現在の天下りを規制する仕組みは、07年の国家公務員法改正でできたものですが、そもそも『ザル法』なんです。現役職員によるあっせんは規制されていますが、次官や人事課長などが役所を辞めてからあっせん行為をしても問題にならず、OBによるあっせんは今も続いています。加えて、違反した場合は懲戒処分までで刑事罰がない。あっせんをするのも懲戒処分をするのも人事当局ですから、犯人に警察権と司法権を与えるようなもので、機能するわけがありません。…抜け道がたくさんあるのです」

やっぱり、「役人と何とかは1度やったらやめられない」ってわけなんですね。

01/20 昨夜のテレ朝「報道ステーション」で、オバマ大統領の任期最後の記者会見の様子を視聴しました。
ついつい、後継の人の顔や言動を思い浮かべてしまうからなのでしょう、「全米が泣いた」と言われる10日の「さよならスピーチ」同様、聴く人の心を打つなかなかの受け答えでした。
なによりも、並み居る記者たちを前に「報道は権力監視に奮闘を」と語り始めたのにはびっくり。「核なき世界」では「ただの口先男じゃないの?」と思っていた零細出版人ですが、この人に対する評価を変えざるをえませんでした─。

「民主主義国家にとって『報道の自由』が絶対不可欠であることは言うまでもない。記者たちには、巨大な権力者に批判的な目を向け、市民に対する説明責任を果たさせる役目がある」

「必ずしもあなた方の結論に同意しなかったが、広い見識を持った市民がいなければ、民主主義は機能しない。米国と民主主義があなた方を必要としている」

「記者は巨大な権力を持つ人にこびず、批判的な視線を向け、責任を果たしているか有権者に示さなければならない。この国が最大限の力が発揮できるように後押ししてくれることを願っている。『アメリカは大丈夫だ』と確信している。そのためには戦わなければならない」

そんなオバマ氏の支持率がここにきて急上昇、CNNの調査でも、ABCテレビ&ワシントン・ポスト共同調査でも、8年前の就任時と同じ60%に戻ったという話です。
これもひとえに、「トランプ効果」なのかもしれません。

01/19 けさの朝日新聞メディア欄「皇居で手を振る、人権なき『象徴』」(高橋源一郎)は、「退位問題」がクローズアップされる今日、大いに考えさせられるところがありました。
高橋さんはまず、作家・中野重治が1947年に発表した「五勺の酒」の一節を引きます─。

「僕は天皇個人に同情を持っているのだ…あそこには家庭がない。家族もない。どこまで行っても政治的表現としてほかそれがないのだ。ほんとうに気の毒だ…」

個人の「人権」の尊重を謳った新憲法の公布を告知する、当の「その人」(裕仁氏)に「人権」を保障しない「民衆の傲慢さ」、「戦後民主主義の薄っぺらさ」を、中野は感じとっていたのだろうと高橋さんは推測します。
そして、被災地で、先の戦争の戦跡で「弱者と死者への祈り」を捧げ、ひたすら「象徴」の役割を務めながらも、いまだに「人権」について考えられることのない「その人」(明仁氏)に同情の念を寄せます。
首相以下ほとんどの政治家・官僚らが、平気で日本国憲法を蔑ろにし、踏みにじっている昨今、「憲法99条を誰よりも厳格に守っているのは、この人ぐらいのもの」と、零細出版人も思い始めていたところです。
まさにその当人に「人権」が認められないというのは、「象徴天皇制の最大の矛盾」ではないかと思うのですが、先般の「おことば」や「退位意向表明」は、そんな矛盾の軋みの中から発せられた「人権を希う人間の叫び」のように聞こえてなりません。

01/18 昨年の国民投票で「EU離脱」を選択した英国がどうやら、単一市場から離脱する「Hard Brexit」(強硬離脱)を決めたようです。
政府方針を発表したメイ首相は、「半分残り、半分出るようなことはない」と、かの"鉄の女" 顔負けの思い切りのよさ。「それより何より移民規制を」ということなのでしょう。
今を時めくトランプ氏は、「離脱はすばらしい結果となる」なんて称賛する一方、ドイツに対しては、メルケル首相について「非常に壊滅的な過ちを犯した。どこから来たかも分からない不法者を受け入れた」とボロクソ。
こうした「アングロサクソン・エゴイズム」とでも言うべき乱暴狼藉に対し、「テロと難民の問題は分けて考えるべきだということを再度申し上げたい」と、毅然と立ち向かうメルケル首相には、「忌まわしい過去」を理性の力で乗り越えてきた、欧州の知性を思わざるをえません─。

「多くのシリア人は内戦からだけではなく、現地でのテロからも逃げてきている人々だ」

ミソもクソも一緒くたにして排撃し、「民族差別」や「宗教差別」を煽るようなやり方は、「テロと難民の問題」をいっそう始末に負えないものにしてしまうだけです。

01/17 きのうに続いて、『通販生活』ネタで恐縮です。というのもこの雑誌、カタログ誌としては、「大骨、小骨、ありすぎるほど骨がある」からです。
今回採り上げるのは、「落合恵子の深呼吸対談」。27回目の対談のお相手は、何と「かつて "変人"、さらに "変革の人" とも呼ばれた小泉さん」。そう、元首相の…。落合さんに言わせれば、「反原発についてはわれらが同志」ということです。
で、そこで語られた「コイズミ語録」を抜き書きさせていただきましょう─。

「私は総理のときに『原発は必要だ』と言っていたでしょう。それが総理を辞めたからといって、そんなことを言っていいのかとずいぶん考えました。でも、…批判は承知しながら、『過ちては改むるに憚ること勿れ』だと思ってね。過ぎてしまった過去は変えられないけど、未来は変えられるんだから。」

いや、ホント、あの方がこれほど誠実な人間だったとは、ついぞ見抜くことができませんでした。

「どの世論調査を見ても、国民の過半数は原発に反対だから、野党がまとまって自民党に対抗する候補者を出して、『原発ゼロ』を争点にすれば自民党は衆院選で負けますよ。でも、野党共闘の動きはあっても、『原発ゼロ』を争点にするという発想がない。だから、自民党は助かっている。」

と言って、昨秋の新潟県知事選の実例を挙げます。

「郵政民営化は、最初は自民党内も野党も全部反対派の議員だった。それに比べたら『原発ゼロ』の実現のほうがまだ簡単ですよ。」

数々の修羅場をくぐり抜けてきた人がそう言うのです。いつまでも肝の据わらない民進党の面々には、シャキッと背筋を伸ばしてもらいたいものです。
かつてこのお方を「鈍イチロー」だなんて呼んでいた零細出版人ですが、こちとらも、「過ちては改むるに憚ること勿れ」ってところでしょうか。

01/16 わが家の洗面所で見掛けたレンガのような見てくれの、異様に大きな石鹸。昔の洗濯石鹸か何かなのだろうと、興味半分ぞんざいな使い方をしたところ、連れ合いにたしなめられてしまいました─。

「あれ、"アレッポ石鹸"といって、高級な石鹸なのよ。洗顔専用にしているんだから…」

アレッポといえば、つい最近、ロシアの支援を受けたアサド政府軍がISから奪い返したシリアの軍事的要衝。激しい空爆と砲撃で街は破壊し尽くされてしまいました。

「へえー、そんなところで作られたもんなのかぁ…」

そんなやりとりがあってほどなく、カタログハウスの『通販生活』最新号が届きました。
そこにちょうど、その石鹸についての記事が載っていました─。

「わずかでも生産活動が続いているかぎり、その生産物を買い支えることが、シリア市民の応援につながります」

石鹸を輸入・販売している太田昌興さんは、そう語ります。「なーるほど。そりゃ、いい加減な使い方をしちゃいけないわけだ」

そもそも石鹸なるものが発明されたのは、紀元10世紀頃のアレッポだったなんて、この記事で初めて知りました。オリーブオイル60%に月桂樹オイル40%を配合して作られるそうですが、その月桂樹オイルたるや、5トンの実からわずか500キロしか搾油できないという貴重なもの。
いやはや、そのことを知ったら、いささかもぞんざいに扱うことなどできません。

01/13 あんな「身勝手な独演会」は「記者会見」なんてものじゃない。そもそも「記者会見」とは、国民の「知る権利」を負託されたメディアを通じ、権力者が国民に今後の施策などを説明する場。民主主義の大事な安定装置のひとつです。
これからいったい何をどう進めようとしているのかろくに語ることなく、あろうことか自分に都合の悪い記事は「偽ニュース」と断じ、それを伝えたメディアは徹底的に排撃する。
ロシア訪問時のスキャンダルを報じたからなのでしょう、記者席最前列から質問指名を求めたCNN・アコスタ記者への対応は、あまりに露骨なものでした─。

 トランプ氏「(質問の指名は)君じゃない。君の会社は不快だ!」
 記者「あなたはわれわれの機関を批判している。機会を下さいませんか?」
 トランプ氏「静かに!」
 記者「次期大統領!」
 トランプ氏「質問しようとしている人がいる。失礼なことはするな。君には質問させない。君たちは偽ニュースだ!」

これが間もなく大統領に就任する男かと思うと先が思いやられます。
しかし、権力者のあからさまな選別姿勢にひるむことなく、記者たちが発言を求めて一斉に挙手する情景には、ある種の感銘すら覚えました。
でも今後、乱暴な権力者の恫喝に屈し、それに取り入ろうとする向きも出てくるかもしれません。まっ、せいぜい、どこかの公共放送政治部の「アベギンチャク記者」のようにはならないことを祈る次第です。

01/12 けさの東京新聞に掲載された、米女優メリル・ストリープさんのゴールデン・グローブ賞授賞式でのスピーチには、心から共感を覚えました─。

「軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を駆り立てます。権力者が自分の立場を利用して他の人々をいじめれば、われわれは全員敗者となります。」

いま世界がその一挙手一投足に注目するトランプ氏が、身体障害のある記者の真似をしてからかったことへの痛烈な批判です。
ストリープさんは、さらにこう続けます─。

「これは記者にも通じる話です。説明する力を持ち、権力者のあらゆる横暴を批判する、信念を持った記者がわれわれには必要です。だからこそ、建国の父たちは報道の自由を憲法に記したのです。」

「言論・出版・結社の自由」を保障した米国憲法修正第1条の精神が、ハリウッドの人々の心の中に深く根づいているのを見る思いがします。
翻って思うに、この6日に東京地裁が扶桑社に対して下した『日本会議の研究』の出版差し止め決定は、いったい何なのでしょう?

「本の販売を許さない措置は、著者や出版社に損害を与え、萎縮を招くだけではない。人々はその本に書かれている内容を知ることができなくなり、それをもとに考えを深めたり議論したりする機会を失ってしまう」(けさの朝日新聞社説)。

そんなことを歯牙にもかけないこの国の司法のありようは、根底から問われなければなりません。

01/11 きのう講談社のコミック誌「モーニング」の編集次長が、殺人容疑で逮捕されました。ジャンルの違いはあれ、同業者のひとりとして、無関心ではいられません。
すると、「待ってました!」とばかり、けさの新聞に『週刊文春』の「驚愕スクープ」広告が−。

「『進撃の巨人(講談社『別冊少年マガジン』)』元編集長の妻が怪死/単行本累計6千万部のベストセラーを生んだ京大卒カリスマ編集長が昨年8月、自宅で妻の首を絞め、階段から突き落とした疑いがある。妻は窒息死。夫婦には4人の子がおり、夫は育休を取得するほど子煩悩だったが、近隣には罵り合う声が響いていたとの証言もある。本人を直撃した─。」

事件が起こったのは昨年の8月、「逮捕」はきのう。その公式発表の翌朝には早くも週刊誌の「驚愕広告」(!)が新聞を賑わせている。なんとまあ、タイミングのよろしいことで…
そこで、零細出版人の「下司の勘繰り」2題−。

1)容疑者逮捕の日時について、早くから警察のリークがあった。
2)昨夏から事件を追っていた文春の「驚愕スクープ」を察知した
  警視庁が、慌てて機先を制した。

おそらくは後者だろうと思うのですが、それにしてもまだ証拠も証言も不十分、容疑者も容疑を否認している。「消去法による状況証拠」だけでは、立件は容易ではないでしょう。
「推定無罪」の原則からすれば、講談社が「本人は無実を主張しており、捜査の推移を見守りたい」とコメントしたというのは、現段階でのひとつの見識かと思います。

01/10 福島第1原発事故から間もなく6年。そんな事故などまるでなかったかのように、政府・電力会社は遮二無二、原発再稼働の動きを加速させています。
そして、事故の検証も疎かにしたまま、事故処理・賠償費用の負担は国民に転嫁し、あろうことか「再稼働させなければ電力料金を値上げする」との脅しすらチラつかせる始末。
そんなとき、昨夜放送されたNHKスペシャル「東日本大震災『それでも、生きようとした〜原発事故から5年』」は、事故の結果に翻弄され続ける福島の惨状を浮き彫りにしました。
長い避難生活を余儀なくされ、仕事や家族、故郷の共同体的つながりを失い、次第に孤立化していく人々… その行き着く先が、世界的な医学誌に発表された「増加する福島の自殺」だとすれば、これほど切ないことはありません。
川内村での農業再建の夢を打ち砕かれ、自死してしまった30代の新婚夫婦、自分の畑のすぐ隣にうずたかく積まれた「除染廃棄物」の山を見て死を選んでしまった南相馬市の農民…
汚染地帯の中の寺で罹災者たちの相談にのってきた住職が、あまりのやるせなさからか、寺の外に「いのち」と墨書した白い旗指物を掲げるフィナーレが、強く脳裏に焼き付けられました。

01/06 日本老年学会と日本老年医学会がこのほど、「高齢者は75歳以上」という提言をまとめたそうです。65〜74歳はまだまだ「心身とも元気な人が多く、高齢者とするのは時代に合わない」ので、今後は新たなカテゴリー「准高齢者」に入れられる、ということのよう。
このところ「高齢ドライバー事故」なんて記事を鼻先に突き付けられては、肩身の狭い思いをさせられてきた零細出版人としては、「熱烈歓迎」とまでは行かなくても、何だか「首の皮1枚で実社会に繋ぎ留められたような不思議な心地」がいたします。
で、そんな正月、『出版ニュース』に「零細出版社のシューカツ」の話を寄せたり、年賀状に「そろそろ人生の締め括りを…」なんて書いたりしたところ、某著者から、こんなお叱りの言葉を頂戴してしまいました−。

「まだ仕事にけりをつけてはいけません。私の本をもう三冊出すまでは許可できません。もし仕事に疲れたら、デモに参加すると元気が出ます」と。

このお方、「准高齢者」卒業ぎりぎりかと思われるのですが、いやはやお元気そのもの。「生物学的にみた年齢は10〜20年前に比べて5〜10歳は若返っている」というのは、どうやらホントのようです。

01/01 明けましておめでとうございます。
英国の "Brexit"(EU離脱)、米国の「トランプ現象」、各国での極右勢力の台頭 etc. …世界は重大な岐路に差しかかっているようです。あるいは、戦後72年の価値観が根底から引っ繰り返される事態も考えられなくありません。
そんな危機の時代に、いや、だからこそ、この国の政治も社会も、目に見えて劣化しています。その象徴的な例が、沖縄県高江での大阪府警機動隊員の「土人」発言かもしれません。
若い警官が公然と "戦前の亡霊"のような発言をする。これを擁護する大阪府知事、これを「差別」と認めない沖縄北方担当相、その閣僚発言の訂正も謝罪も不要とした閣議決定…。
そのような理不尽に対しては、躊躇うことなく抗う所存です。
本年もよろしく。
                     2017.1.1
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