back number 2016-12(December)

蓼科湖から望む冠雪の赤岳(16.11)

12/29 心にもない美辞麗句をちりばめた、われらが宰相毎度おなじみの「空疎な演説」が、遠くハワイから流れてきました−。

「耳を澄まして心を研ぎ澄ますと、風と波の音とともに、兵士たちの声が聞こえてきます。」

じゃあ何で「75年が経ったいまも、海底に横たわるアリゾナには数知れぬ兵士たちが眠ってい」るのでしょう? そのご仁は、そこまでは言及しません。
おまけに、米国の「善意」や「大いなる寛容」には感謝し、「和解の力」(the power of reconciliation)なんて言いながら、アジア諸国への加害責任なぞには頬かむり。
要するに、「未来志向」という観点からすれば、「日米同盟」だけが「希望の同盟」だっていうことなのでしょう。
まだしばらくはこの馬鹿馬鹿しさに耐えていかなければならない、とのことのようですが、まっ、みなさまよいお年を!

12/28 今年も残るはあとわずか。この忙しい最中、地裁民事部から私宛てに郵便が届いていると連れ合いが言う。何でも、封筒には「裁判員制度へのご理解・ご協力をお願いします」と書いてあるとも。
「いやー、ついに俺んとこにも来たかぁ」と言ったまま、その晩に封書を開けることはありませんでした。早く開けりゃいいものを、「このクソ忙しいときに…」とか、「殺人事件だったりしたらいやだなー…。いや、殺人なら刑事部だよなー」とか言いながらも、半分は出てみたいと思っている自分がそこにいるのです。
そして休みの日になっておもむろに封を切ると、「お知らせ」との紙が出てきました−。

「この度、裁判所はあなたの会社や団体を管轄する法務局や県当から登記簿上の懈怠があった旨の通知を受けました。これに基づき、あなたを過料に処す決定をいたしました。…」

そういえば先だって東京法務局に、2週間以内になすべき「株式会社役員変更登記」を大幅に過ぎて提出したのですが、「このくらいだったら大丈夫かもしれませんよ」などと受付担当者に言われ、安心しきって、そのまますっかり忘れていたのでした。
こうして、「寝耳に水の過料」は3万円也。そればかりか、「今回郵送に要した費用」として、「82円分の収入印紙」(!)を官製はがきに貼付して郵送せよ、とのお達し。
さぁて、そんな中途半端な収入印紙なぞどこにも売っていません。本局まで行ってようやく、50円、30円のものを各1枚、1円を2枚を手に入れ、何年も前の年賀はがきに貼って出したのでした。
200円なら手持ちもあったのですが、「82円分を超える収入印紙を貼付される場合には、『過払い分は放棄する』とはがきに記載し押印してください」という「国家権力のあつかましい指示」を読んで、「意地でもそうはすまい!」と手間ひまかけて82円分を揃えた、というわけ。バッカみたい。

12/27 出版界では長らく「雑高書低」(雑誌の売上げが書籍の売上げより多い)が言われてきましたが、ここにきて41年ぶりにその常識が覆ったようです(東京新聞、12月26日夕刊「雑誌販売、41年ぶりに書籍を下回る 漫画も落ち込み」)。
と言っても別に、書籍の売上げが増えたなんて話にならないところが、「出版不況の出版不況たる所以」です。
出版科学研究所の調査によると、本年1月から11月までの出版物推定販売金額(電子出版を除く)は、次のとおり−。

「雑誌は約7200億円で、前年比7.7%減。ピークだった1997年と比べると市場規模は約46%にまで縮小した。書籍は約7300億円で…、前年比1.6%減にとどまった。雑誌は19年連続、書籍は10年連続の前年割れとなった。」

思い起こせば、この1、2年のあいだに取次業界4位の栗田出版販売が民事再生に入り、同5位の太洋社が破産。加えて、専門書などの「しっかりした棚づくり」で定評のあった芳林堂書店や、岩波ブックセンターの運営会社・信山社の破産と、よくないことばかりが続きました。
なかでも神保町の信山社の破産(負債額約1億2700万円)は、代表取締役会長・柴田信さんが亡くなられた直後のことだけに、身につまされる思いがいたしました。
そんなこともあって零細出版人は、近く出る『出版ニュース』誌に、「"シューカツ"の話をしよう」という一文を寄せています。ご関心がおありの向きはご一読を。

12/26 電通新入社員過労自死事件から1年。亡くなった高橋まつりさんの母の手記を読みました−。

「去年の12月25日クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。(うそ)であってほしいと思いながら…」

そんな出だしに引きつけられて、何度も読み返してしまいました。何でそれほど引きつけられたのかといえば、クリスマスとはいえ、東京の「夜の街のきらきらの正体」を、当のまつりさんが鋭く見抜いていたからにほか成りません−。

そう、「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」と。

ところで、かつて「百万ドルの夜景」と言われた熱海のそれとも異なるそこには、「生産性」や「効率」などといったものが潜んでいるだけでなく、近年ではさらに「便利さ」(Convenience)までもが加わっているようです。
深夜の田んぼの向こうに煌々と輝くコンビニや自動販売機…、たまにその「便利さの恩恵」に浴すことはあっても、毎晩どうしても必要というわけでもないでしょう。
私たち日本人は、飽くことなき便利さの追求の果てに、どれだけ余計で無駄なものを作ってきたことでしょう? 「風が吹けば桶屋が…」の類いかもしれませんが、おそらくそのことも、若い女性社員を死に追いやった「長時間労働」の要因のひとつとなっているに違いありません。

12/22 政府の原子力関係閣僚会議はきのうようやく、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を決めました(Cf. 12/01)。
1994年の稼働から20年余り、国民の血税を1兆円も投入しながら、実際の稼働日数はわずか250日−。と、そんな「無駄の見本」のような巨大プロジェクトで、いったいどれほどの「知恵」が得られたというのでしょう?
苦し紛れに「一定の成果はあった」(松野博一文科相)などと大見得を切る御仁もいます。このお方、「フル出力運転ができなかった責任をとって」、5カ月分の大臣給与と賞与の計66万円を「自主返納する」なんて言っているそうですが、冗談じゃない。その廃炉にも、政府のアバウトな見積りで3700億円以上かかるっていうのに。
しかも、それに輪をかけて許しがたいのは、「高速炉の実証炉(!)をめざす」などと言いだしたこと。まるで、九九(原型炉)も覚えていない小学生に割り算(実証炉)をやらせるようなものじゃないですか。
あの方々が白昼堂々、そんな馬鹿げたことを言うのも、いったん決めた「核燃料サイクル路線」(どうするプルトニウム参照)を、ただただ維持したいだけのこと−。再処理施設がコケてしまえば、菩薩様が手にする数珠ははじけてしまい、「核燃料サイクル」はたちまち御陀仏。「トイレのないマンション」は「糞詰まり」になってしまう、というわけです。
で、突然ですが、これとまったく同じ「官僚的な発想の貧困」が、この間の沖縄の基地問題をめぐる動きにも見ることができます−。

「役所がいったんこうすると決めたら、それを役所が自ら覆すことは難しい。たとえ多くの人の思いと違っても、当初の決定に違法な点がなければ裁判所は取り消しを認めない。」

先日の辺野古訴訟の最高裁判決とはそんなものだと、きのうの朝日新聞社説は書いています。
「辺野古が唯一の解決策」と念仏のように唱え続ける政府、それを追認するだけの司法…。これでは、望ましい解決策が見えてくるはずもありません。
そう、この国の政府、官僚、司法がいくら寄ったところで、「文殊の知恵」なぞ出てくるわけがない、というお話でした。

12/21 辺野古埋め立て承認取り消しをめぐり国が沖縄県を訴えた「不作為の違法確認訴訟」で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)はきのう、「民意に反する新基地建設の強行は憲法が保障する地方自治権の侵害だ」と憲法違反を主張した沖縄県の上告を退けました。
これで県側の「敗訴」が確定してしまったのですが、翁長知事の言い分を聞くための弁論も開かず、「国の指示に従わないのは不作為で違法」と一方的に退けてしまったことは、憲法の地方自治の精神を蔑ろにしてしまうだけでなく、この国の司法の歴史に重大な禍根を残してしまいました。
きのうに引き続き、琉球新報社説(「辺野古訴訟県敗訴/不当判決に屈しない/国策追従、司法の堕落だ」)を引かせていただきましょう−。

司法の国策追従は目を覆わんばかりだ。国の主張を丸飲みして正義に背をそむけ、環境保護行政をも揺るがす不当判決である。
 最高裁は翁長雄志知事の名護市辺野古埋め立て承認取り消し処分を違法とする判断を下した。行政法、憲法など多くの学者が誤りを指摘する福岡高裁那覇支部判決を無批判に踏襲する内容だ。
 政府が強行する辺野古新基地建設の埋め立て工事に司法がお墨付きを与えた。法治主義、地方自治を否定し、司法の公平性に背いて基地建設の国策を優先した。司法が担う国民の生命、人権、環境保護の役割を放棄したに等しい。」

12/20 13日に沖縄県名護市沖で起きた「オスプレイ大破事故」、その大破機を上空から監視していた別の「オスプレイ」の普天間飛行場での胴体着陸…。
立て続けに起きた「オスプレイ」がらみの事故からまだ6日、米軍による事故原因究明どころか、日本側にいたっては現場に近づくことすら叶わなかったというのに、そんな「疑惑の欠陥機」が沖縄で飛行を再開しました。
当初は「原因の徹底的な究明を求める」(アベ首相)なんて言っていた日本政府は、米側から「機体自体に問題はない」などと聞かされるや途端に前言を翻し、「米側の説明は防衛省、自衛隊の専門的知見に照らし合理性が認められる。再開は理解できる」(菅官房長官)だの、「防衛省、自衛隊の知見、そして専門的見地、経験則などから合理性がある」(稲田防衛相)などと言いだす始末。
あれっ、このお二方の言い分、瓜二つですね。この人たちが、その「専門的知見」やら「経験則」やらを少しでもお持ちだとは、とうてい思えません。そのことを証明するかのように、そう言い終えた防衛大臣閣下がホッとため息をついていたのが、とても印象に残った記者会見でした。
ところで、けさの琉球新報社説が「命の『二重基準』許されぬ」と訴えていたのには、強く共感を覚えました−。

「防衛省の土本英樹審議官は佐賀県議会で『オスプレイ配備は安全確保が大前提』とし、佐賀では給油訓練を実施しないと述べた。審議官は来県し『安全確保のため沖縄でも給油訓練を実施しない』と約束すべきだ。
 陸自オスプレイ配備を予定する佐賀の県議会、市議会で防衛省幹部、職員は何度も参考人質疑に応じている。防衛省は墜落事故が現実となった沖縄でこそ県議会、地元議会の質疑に応じるべきだ。
 県民の安全を軽視する「命の二重基準」は許されない。」

そして、決然とした締めの言葉が素晴らしい−。

「県民に恐怖と忍従を強いるオスプレイ飛行再開は許されない。構造的差別に基づき配備された構造的欠陥機は撤去させるしかない。」

12/19 日銀の「異次元金融政策」=「黒田バズーカ」ぶち上げから3年半、この10月も消費者物価上昇率は8カ月連続のマイナス。「2年で物価上昇率2%」などという皮算用は、完全に破綻してしまいました。
慶大の金子勝さんが、そんな日銀に対する銀行の不信はすでに「危険な領域」に入っている、という物騒な話を書いています(『週刊金曜日』12/16号、「地域金融を破壊する異常な金融政策」)。

「まもなく日本経済は、日銀が債務超過状態になっても、日本の国債を買い続けられるか、さらには債務超過になった日銀が発行する日銀券=お札とは一体何なのか、という問題に直面する」

ということで、1998年のロシアのルーブル危機のように、お札が紙くずになってしまうといった事態も、と。
そもそもこんな怪しげな経済政策が出てきたのも、アベ政権が日銀人事に介入し、「話ばかりデカいバズーカ氏」を総裁に据えたことに端を発しています。
そう、その構図は、NHK会長人事への介入とそっくりで、報道機関の何たるかをからきし知らないモミイ氏が周囲からの総スカンを受け、任期満了前に早々と続投の芽を削がれたことを彷彿させるものでした。
結局、「この政権の強引なやり口がまんまと成功したのは、内閣法制局長官人事くらいのもの」だったのではないでしょうか?

12/16 13日に沖縄県名護市沖で起きた米軍「オスプレイ事故」について、主要な全国紙がそろって「不時着」と伝えるなか、米軍の準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」が「墜落」を意味する"crash"という表現を使っていると、けさの東京新聞が伝えています−。

 「Osprey crashes off Okinawa, crew safe」
 (オスプレイが沖縄沖に墜落、乗組員は無事)

また、「琉球新報」も、米海軍安全センターが事故の規模について最も重大な「クラスA」に分類し、「機体は大破した」と評価していることを伝えています。
ついでながら「クラスA」は、「被害額が200万ドル以上や死者が発生した事故」ということで、何でもカネに換算するところは、いかにも米国的。ちなみに、この事故の被害額は8060万ドル(約95億円)にのぼり、1機の機体価格(7210万ドル=約85億円)を上回るということです。
さらに、同じく「琉球新報」が、米国防研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏の重大証言も伝えています−。

「航空機が制御できていた場合、機体の損傷を引き起こさずに水面に着陸できただろう。機体が激しい損傷を受けた事実はその航空機が制御不能であり、航空機を破壊するに十分な力で水面にぶつかったことを示唆している」と。

同氏は、「回転翼モードで補給することができない」という「オスプレイの新たな構造的欠陥」を指摘、「同じような墜落事故が再び発生する」と強調したそうです。
これらを総合的に勘案すれば、今回の事故が米軍や日本政府が言っている「不時着」などでは決してなく、「れっきとした墜落」であることがわかろうというものです。

12/15 「オスプレイ事故」「カジノ法」「年金抑制法」…けさの新聞1面には、重大ニュースの見出しが林立。実に腹立たしいことばかりですが、「オスプレイ」から採り上げましょう。
在沖米海兵隊報道部のリリースでは、「キャンプ・シュワブ沿岸部の浅瀬に『着水』した」ですと。日米安保条約の「地位協定」によって自国内での事故の現場検証すらままならない日本政府も、同じ文句をオウム返しにするだけ。
冗談じゃない。プロペラを破損し、コントロールを失ったからこそ、堕ちたのではないのか!? バラバラになった機体が波間にただよう様子のどこが「不時着」("emergency landing")なのだ!? 同日夜に普天間飛行場で起こった別のオスプレイの「胴体着陸」("crash landing")はそうだとしても、こちらの方は、どう考えてもれっきとした「墜落」("crash")。
「事故を小さく見せたいがための言い訳」に騙されちゃいけません。そのような「語法」は、原発事故が起こるたび "ムラ人" たちからさんざん聞かされたじゃないですか!?
現場の映像を見ると、米軍関係者が取り囲む事故現場にはロープが張られ、米軍兵士が警備しています。その前には、ご丁寧にも、もう1本ロープが張られ、日本の警官が立って、報道陣などが入り込まないように見張っています。
この国が文字どおり米国の「属国」であることを如実に示す、とてもわかりやすい構図でした。でも、そんな見苦しい両国関係をよりはっきり理解させてくれたのは、在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官の発言でした−。

「パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ」「称賛すべき決断だ」と。

先だっての「土人」発言機動隊員に対する大阪府知事の「ねぎらいの言葉」を彷彿させる暴言です。
どこかで「これが沖縄の置かれている現実だ」というような記事を読みましたが、実は「これが日本の置かれている現実」であることを知るべきでしょう。

12/14 けさの朝日新聞メディア欄インタビューは、過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博さん。「過労死の四半世紀」を語っています。
川人さんは、最近起きた電通新入女性社員過労自死事件の遺族側代理人を務めていますが、25年前の同社男性社員自死事件のときも獅子奮迅され、電通の責任を認める最高裁判決を引き出しています。
今回の女性社員のケースは、同社がいっときは「反省」するかの姿勢を示したものの、その後四半世紀にわたって悪名高い『鬼十則』を掲げ続けるなど、事態はあまり改善されてこなかったことを暴露しました。
日本を代表する大企業にしてからがこれですから、他の多くの企業の社員や非正規社員の状況は、推して知るべしでしょう。
で、川人さんのお話の中で、零細出版人がいちばん興味を引かれたのは、インタビュアーが「パソコンや携帯電話をだれもが持つ時代です。過労死問題には、どう影響していますか」と問うたところ−。

「昔は日曜日は仕事から解放されていたけれど、24時間365日連絡が取れる体制では、どうすれば労働者がオフの時間を確保できるかを、真剣に考えないといけない。」

川人さんは、そう答えています。「ケータイ持タナイシュギシャ」を自任する、ほとんど前時代的な零細出版人としては、「わが意を得たり」といったところ。
では、その対策は?

「労働密度の高まり、労働強化は、ほぼすべての産業に行き渡ってますね。自宅で仕事をするのも、かつては風呂敷に資料を包んで持って帰る『風呂敷残業』でしたが、今はUSBメモリー。さらにメモリーがなくたって、連動できるシステムもたくさんある。オンオフを切り替える、国家社会レベルや企業レベルのルールをよほど覚悟を持ってつくらないと、働く人はもたないと思います。」

まったく同感。さらに零細出版人にも付け加えさせていただくなら、「職場を出たら、仕事のメールもは絶対開かない」と決断すること。
零細出版人の周辺には、そのために迷惑した方も多いかと思いますが、これが「時代に潰されないための浅知恵」であり、「リベルタのリベルタたる所以」ということで、お許しあれ!

12/13 米軍辺野古新基地建設をめぐり、翁長雄志沖縄県知事知事が埋め立て承認の取り消し撤回に応じないのは違法だと国が訴えた訴訟で、最高裁は、「民意に反する新基地建設の強行は憲法が保障する地方自治権の侵害だ」と訴えた県側の上告を棄却、審理しないことを決めました。
ということはつまり、県側の全面敗訴となった福岡高裁那覇支部による一審判決が確定するということです。
それにしても、国側の主張を全面的になぞったばかりか、「普天間飛行場の被害を除去するには、辺野古に新施設を建設するしかない」などと、司法の使命を明らかに踏み外した噴飯物の一審判決を追認するとは、最高裁の権威も地に墮ちたもの。
1999年の地方自治法改正から17年、国と地方自治体は独自の権限を持つとされ、「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係へと変わったはずでした。皮肉にも今回の訴訟は、その法の真贋を最高裁に問う初の機会ともなりました。すなわち最高裁は、地方自治法に言われる「対等・協力」の関係を真っ向から否定した、ということになるわけです。
「法の番人」とされる最高裁は、いつまでも行政府に寄り添ってばかりいないで、「法の精神」にまで遡って突き詰めて考え、私ら市井の民にも納得できる判決をたまには出していただきたいものです。
いつまでもこんな判決を出しているような裁判官には、国民審査のときに、でっかい×印をつけてやろうじゃありませんか。

12/12 この3年間にわたって世間を騒がせてきたNHK会長・籾井勝人さんが、来月、任期満了で退任する運びとなりました(Cf. 12/2、12/05)。まずは、お慶び申し上げます。
で、密室の経営委員会で決められた次期会長は、現職経営委員で三菱商事元副社長の上田良一さん。またしても商社出身です。
1年前までNHK経営委員会委員長代行・監査委員を務め、モミイ批判の急先鋒だった上村達男さんが、『日刊ゲンダイ』の「注目の人 直撃インタビュー 」にご登場、「NHKの病巣」を解き明かしています。その中で上村さんは、次期会長についてこう述べています−。

「教養がある方ですし、おかしな発言をする心配も少ないと思います。ただ、最も重要な政府との関係で不偏不党を貫ける方かというと、むしろ籾井さんを支えてきた人でもありますので、政府のゴーサインの枠内でしか行動できないのではないかという懸念があります」と。

でも、公共放送NHKにとっては、ここがポイントになります。前任者のように「右向けー右」と言われていつまでも右を向いているような人ではないのでしょうが、「政府のゴーサインの枠内でしか行動できない」のでは、似たり寄ったりということかもしれません。

「籾井会長はNHKの統治機構に大きなバグが潜んでいることを明らかにしたと思います。会長が専制君主のような存在になることを防ぐためには、監督権を持っている経営委がよほどしっかりしなければなりません。とりわけ監査委員会の機能強化は喫緊の課題です。」

12/09 定期検査のため2カ月間停止していた九州電力川内原発1号機が、運転を再開しました。
8日の再稼働に向けて着々と準備を進めてきた九電の動きは前々からわかっていたのに(Cf. 11/29)、その間、何ら有効な手だてを打たず、のらりくらりやってきた鹿児島県・三反園訓知事は、「再稼働容認」のそしりを受けても仕方ありません。
だいたい、物騒なものを動かしてしまってから、前に終えていた「特別点検の結果報告を委員会で検証し、結論を踏まえてどのような対応が必要か総合的に判断したい」なんて、そもそもが逆立ちした話。
ブレーキが利くのかどうかもわからない車を高速道路で走らせようってことでしょ? 事故を起こした後になって、「実はあの車、ブレーキ機構に不具合がありました」などという点検結果報告を受けても、もはや「後の祭り」じゃありませんか?
当選直後には「安全性が確保されていない原発を動かすわけにはいかない」と、勇ましい決意のほどを聞かされ、心底感銘させられたのに、この期に及んで、「私に稼働させるさせないの権限はない」などと繰り返し、「稼働してもしなくても原発は残る」なんて "迷言" を言い放つ知事には、もう裏切られた気持ちでいっぱいです。

12/08 来年の話をすると鬼が笑うそうですが、きょうは早ばや来年の催し物のお知らせ(冒頭に掲載のポスター参照)−。

日本ジャーナリスト会議(JCJ)講演会

上出義樹

《メディアを蝕む報道の自己規制》

第2次安倍政権成立以来、メディアへの政権の露骨な介入・攻勢が相次ぐなか、「萎縮」「忖度」「自己規制」…といった悪しき風潮が報道現場を蝕んでいる。吠えることを忘れた「ウォッチドッグ」の致命的な病巣にメスを入れ、民主主義の安定装置としてのジャーナリズム復権の手だてを考える。

 と き:2017年2月12日(日)13時半〜16時
 ところ:日比谷図書文化会館4F会議室

   東京メトロ 丸の内線・日比谷線「霞ヶ関駅」徒歩約3分
   都営地下鉄 三田線「内幸町駅」徒歩約3分
   東京メトロ 千代田線「霞ヶ関駅」徒歩約3分
   JR新橋駅 日比谷口より 徒歩約10分

 資料代:1000円(学生500円)

12/07 問題だらけの「カジノ法案」が、ろくな審議もせず、わずか6時間で衆院を通過しました。
「統合型リゾート〈IR〉整備推進」などと標榜するこの法案、その目玉は、刑法の賭博罪で禁じられている賭博行為(ギャンブル)をおおっぴらに認めようとするところにあるのは明白。そんな「負い目」を糊塗するために、「施行後1年以内をめどに実施法案をつくる」などと言っているわけ。
こんな悪法ができた日には、反社会的集団が利権に群がったり、マネーロンダリング(資金洗浄)に使ったりするだけでなく、「ギャンブル依存症」患者を増大させ、治安の悪化や人心荒廃、多重債務、家庭崩壊といった社会問題を、いっそう深刻化させてしまう恐れがあります。
問題は、法案そのものの中身だけではありません。その「審議」も、唖然呆然、前代未聞のことばかり−。
けさの東京新聞によると、衆院内閣委で質問に立った自民党・谷川弥一議員は、「あまりにも時間が余っている。地元のことと最後に私見を述べて終わる」と言ってから、「40分の質問時間のうち28分を過ぎたあたりから般若心経の一部を唱え、さらに『夏目漱石が好きだ』と文学論を展開した」。
しかもそのあと維新の浦野靖人議員も、「『私は高校で毎日般若心経を唱えていた』と応じ、質問時間を残して席に座った」という。
しかも、呆れ果てるのは、自民党や「金魚の糞」ばかりではないようです。本来なら毅然として悪法に立ち向かうべき野党第1党の民進党が、議決前に党の方針を固められず、採決後になってから「反対」を表明するなどという体たらく。
この国の議会政治は、もはや死に体同然!

12/06 イタリアの国民投票で現政権派が敗北、レンツィ首相が辞意を表明。オーストリアの大統領選挙では、エコロジスト出身候補が辛うじて勝利したものの、極右候補が驚異的に支持を伸ばしています。
「トランプ現象」が欧州まで呑み込んだということなのか、どこでも「ポピュリズム」勢力が伸長しているようです。
でも、「極右」ばかりが伸びているのかというと、そうではありません。ギリシャの「急進左翼連合」やスペインの「ポデーモス」なども考えあわせれば、EUを含む「既成政治システムへの拒絶反応」とみた方がよいのかもしれません。
ひるがえって日本を見てみるとどうでしょう? この国も決して例外ではなく、人々は新自由主義やグローバリズムに苦しめられているのですが、反対世論はまだまだ弱いよう。
なぜなのでしょう? すでに、国際的には「極右」の範疇に入れられる政党の「一強支配」の下にあるからなのでしょうか? あるいは、「五つ星運動」のベッペ・グリッロよりはるか以前にお笑い芸人をトップに据えた「政治先進自治体・大阪」で、「維新」が「既成政治の打破」を唱えて勢力を伸ばしているからなのでしょうか?
ともあれ、そんな「拒絶反応」が、もっとまともな形で出てくることを期待したいものです。

12/05 「モミイ再選」の芽は断たれたものの、引き続きNHK経営委員会は「密室での会長選び」に入ることになります。
これに対し前出の「NHK全国退職者有志」は、7月に立ち上げた「次期会長推薦委員会」で、視聴者の信頼を取り戻すために最もふさわしい以下の3名の候補者を推薦、おととい経営委員会に文書提出しています−。

 落合恵子氏(作家)
 廣渡清吾氏(法学者、東京大学名誉教授)
 村松泰子氏(社会学者、東京学芸大学名誉教授)

推薦にあたっては、次のような基準が設けられたとのこと−。

「私たちは、『放送は文化である』と考えます。文化にとって必要な要件は、『自律性』です。ドラマも…ニュースも何者にも支配されず、NHKの責任において、制作されるべきものと考えます。会長はその先頭に立ち、『文化の創造』という理念に基づいて、経営にあたる象徴的存在であるべきであると考えます。そのために、次期会長候補推薦委員会では、以下の基準を設けて候補を推薦しました。

 1.『政権からのメディア干渉に立ち向かえる人』
 2.『視聴者の広い信頼と支持を得られる人』

 さらに、指名部会が示した資格要件にある『構想力』『リーダーシップ』『経営的センス』を備えているかどうかを考えるうえで、社会的知名度や実績も考慮しました。」

これまでのように、もっぱら財界出身者から選んだり、いわんや政権の意のまま決めたりせず、視聴者・市民の自発的意思を尊重して会長を選んで初めて、「みなさまのNHK」といえるのではないでしょうか。

12/02 「NHK籾井会長、再任困難/経営委員の同意足りず」 −。けさの朝日新聞1面記事に快哉!
来年1月に任期満了を迎える会長を誰にするか? この6日に開かれるNHK経営委員会の会長指名部会で、12名いる委員が推薦する候補者について話し合われることになっているのですが、就任以来あちこちで物議を醸し続けてきたあのモミイさんを推す人が、放送法に定められた9名にはどうにも届かないよう。
それもそのはず同部会は、3年前の11月「次期会長の資格要件」について、以下のように決定しているのです−。

 1)NHKの公共放送としての使命を十分に理解している。
 2)人格高潔であり、広く国民から信頼を得られる。
 3)政治的に中立である。
 4)構想力、リーダーシップが豊かである。
 5)社会環境の変化、新しい時代の要請に対し、的確に対応できる経営的センスを有する。
 6)業務遂行力があり、説明力がある。

あっ、こりゃダメだー。返す返すも残念なことに、モミイさんには、6項目のどれも当てはまりません。つまりは、「不適格者」ということになります。
それでも「どこへ出しても恥ずかしい会長」は、まだまだ「やる気満々」のようですから、油断はできません。
モミイ会長就任以来、早くから経営委員会に「会長辞任勧告あるいは罷免」を求めてきた「NHK全国退職者有志」ら市民団体による「籾井会長罷免要求署名」は現在、8万筆近く集まっているとのことです。
ここは視聴者・市民の力で、何としても「まともな見識を備えた会長」にしたいものです。

12/01 政府はきのう、1兆円もの国費を投じながらあえなく頓挫した高速増殖原型炉「もんじゅ」の「後継炉」開発に取り組む方針を明らかにしました。けさの朝日新聞によると、その「方針」とは、以下のようなものだそう−。

●核燃サイクルを推進し、高速炉の研究開発に取り組む
●2018年をめどに、具体的な工程表を策定
●今後10年で実証炉の基本設計や開発体制を固める
●フランスの次世代高速実証炉ASTRIDなど、海外と協力
●「もんじゅ」や、実験炉「常陽」も活用

おいおい、ちょっと待ってくれ!
そもそも、その「もんじゅ」なるもの、「夢の原子炉」なんて触れ込みで始めたものの、初臨界から20年余りで実働わずか220日。ナトリウム漏れ事故を起こしてダウンしたまま、以後、再起不能。「文殊の知恵」どころか、何の教訓も学ばないまま、目下、「廃炉」が検討されているんですよ。
原型炉すら動かせなかった者が「実証炉」ですって!? 冗談じゃない! あれだけの大失敗を仕出かしながら、何の反省もなく「後継」だなんて、よく言えたものです。
こりゃ、「悪夢」以外の何ものでもないじゃないですか。