back number 2016-02(February)

ややっ、桜の蕾も目を覚まし…(16.01)

02/29 関西電力は、世論の多くの反対をよそに、福井県の高浜原発3、4号機を次々再稼働させました。この再稼働にあたっては、あたかも「発電コストが安い」かの言説が意図的に流布されてきました。
しかし、そもそも「原発は安上がり」などという話が「真っ赤なウソ」だということは、フクシマの事故処理にいまだメドが立っていないという一事を見るだけで明白。
しかも、このたび再稼働された高浜3、4号機は、ともにウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する「プルサーマル発電」で、これがさらに途轍もなく「高くつく」ことになる。
きのうの朝日新聞経済欄記事「MOX燃料の価格、ウランの9倍 高浜原発で1本9億円」(福島慎吾記者)は、そんな事実を明かしてくれました。
電力各社は「契約に関わる事項」などとしてMOX燃料の価格を明らかにしていないのですが、朝日記事は財務省の貿易統計などからこれを割り出しています−。

「高浜4号機は、核燃料計157本のうちMOX燃料(燃料集合体)が4本、3号機は同じく24本入っている。…貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されている。それを輸入本数で割ると、MOX燃料1本あたり2億604万〜9億2570万円。時期でみると、99年の福島第一は1本2億3444万円なのに対し、直近の2010年と13年は7億〜9億円台。13年6月に高浜に搬入されたものは1本9億2570万円となった」

「ウラン燃料の価格も非公表だが、同様に98年7月輸入分は1本1億1873万円。13年10月の輸入分は同1億259万円で、13年6月輸入のMOX燃料はこの約9倍にあたる」と。

何か「ピケティ氏を思わせる手法」ですが、「朝日新聞経済部、面目躍如」といった塩梅です。それに、立命館大・大島堅一教授のコメントがいい−。

「安価になるからリサイクルするはずなのに、MOX燃料は逆に高価で、経済的におかしい。国は商業的にも技術的にも破綻している政策を続けており、負担は国民に回ってくる。」

02/26 「このたび、社内調査で当時のマニュアルにメルトダウンの定義が記載されていることが判明したとのことです。
 社内で作成したマニュアルであり、事故当時にあっても、この定義は組織的に共有されていたはずです。
 事故後5年もの間、このような重要な事実を公表せず、技術委員会の議論に真摯に対応してこなかったことは、極めて遺憾です。」

東電による「メルトダウンの公表に関する新たな事実の公表」についての泉田裕彦・新潟県知事のコメントです。一見穏やかな口調の中にも、「東電への強烈な怒りと募る不信感」が窺えます。
何せ東電は、福島の事故から5年も経とうとする今月10日になってようやく、「このたび、社内調査で当時のマニュアルにメルトダウンの定義が記載されていることが判明した」なんて白状したのです。
しかもコレ、自ら進んで調査したのではなく、柏崎刈羽原発を抱える新潟県の技術委員会の要請があって、しぶしぶ着手したところ、偶然見つかった、といった話です。そんな言い分、誰も信用するわけありません。
あまりに不誠実な対応に、東電回答の実物に当たってみました−。

そこには、同社広報班関係者への聞き取り調査結果のようなものが載っています。たとえば、「〔プレスリリース〕作成の過程で、表現緩和の修正の指示を受けたことがあるか」「炉心溶融やメルトダウンという言葉を使わないように指示を受けたことがあるか」といった問いに対して、異口同音に「ない」とか「記憶にない」とかの答えが並んでいます。
そして、最後の設問「県からの指摘(事実を矮小化など)について率直にどう感じるか」の回答には、不謹慎ながら、思わず吹き出してしまいました−。

「ひたすら一生懸命発表しようと努め、そんなこと(矮小化)を考える余裕はなかった」ですって!?

02/25  今年の七夕に「40年廃炉」の期限を迎える関西電力高浜原発1、2号機について、原子力「規制」委員会は、「例外中の例外」とされてきた「20年の定年延長」を容認することにしたそうです。
昨今のこの国の政治状況を見れば、「さもあらん」と思う向きも多いのでしょうが、そう考えてしまっては、「3・11の教訓」はまるで無意味になってしまいます。
「規制委員会」の田中俊一委員長は、「『老朽原発も〕費用をかければ技術的な点は克服できる」なんて言って、今後も続々「例外中の例外」を乱発するつもりのようです。
「規制委員会」がこのていたらくですから、電力会社の方は「安全への配慮」なぞお構いなく、もっぱら「補修にかかる費用と再稼働の利益をてんびんにかけ、そろばんをはじいた上で」、続々、おおっぴらに「定年延長」を求めることでしょう。
けさの東京新聞社説はこれを「不老神話の誕生か」と書いていますが、正鵠を射ています。ただし、最後の「か」は不要です。
ついでながら、けさの朝日新聞で、東京電力が「福島第一原発事故当時の社内マニュアルに、核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)を判定する基準が明記されていたが、その存在に5年間気付かなかった」との記事を読んで、口アングリ。
「気がついていながら意図的にこれを無視した」という見方もできなくはありませんが、いずれにせよ飛んでもないことです。こんな連中に物騒なものを預けておくわけにはゆきません。
いま一度、「3・11の教訓」を思い起こし、せめて「40年廃炉」の原則は厳守させなければなりません。

02/24  またぞろ「やじ馬を退屈させない動かぬ証拠」が出てきました。甘利明・前経済再生相の現金授受問題にからんで、民主党が公表した音声データの第3弾です。
「有り余る疑獄証拠物件」の中から、「ちょっとだけよ」と勿体ぶって出されているようで、いささか食傷気味にもなりますが、ともあれ「悪の現場」に耳をそばだててみましょう−。

■相模の国・平塚の居酒屋で(15.09)
 始めは「いやいや、でもね」とか言って、カネを受け取るのを断る素振りを見せていた元側用人(秘書)氏、「いろいろ経費かかると思いますが。URの件で何とぞよろしくお願いします」なんて言われた途端、ケロッと態度を変え、「頑張ります」「これいただきます」と、汚れた手を出します。

■移動中の駕篭の中で(15.12)
 元側用人氏「『うちが納得するのは、ある程度、お金が釣り上がることだよ』と今日も(URの総務部長に)言ったら。めいっぱいやっているみたいなんですよね」

これが「口利き」でなくて何でしょう? 元東京地検特捜検事・郷原信郎さんの言うように「絵に描いたようなあっせん利得」です。もはや弁解不能、絶体絶命。
そこで沸き上がる「素人の疑問」−。なのに、いったい何で、東京地検特捜部は動きを見せないのでしょう?
いくら甘利氏側に「元特捜検事」(もちろん、郷原さんじゃありません)が付いているからといって、これだけの「明白な悪事」を放置していいはずがありません。

02/23  共産党が7月の参院選で、すでに候補者を擁立している1人区で「かなりの人は立候補を取り下げることになる」と正式発表。「野党選挙協力」の可能性が出てきました。
実は3年前の参院選時、「このままでは自民党のひとり勝ちになってしまい、一気に改憲へと進んでしまう」といった危機感から市民が立ち上がり、野党各党に「選挙協力」の申し入れをしたことがありました。しかし、残念ながら、この提案はいずれの党からも見向きもされず、むざむざと「自民党一強支配」の誕生を許してしまったのでした。
今回は、「安保法制の廃止と〔集団的自衛権行使容認の〕閣議決定撤回の大義の実現のため、大局に立って判断をした」とのことですが、この方針転換は、1935年のコミンテルン第7回大会での「反ファシズム統一戦線」の呼びかけを引き合いに出しても決して大げさではないほど、画期的なものと言えるかもしれません。
一部には、共産党の提案に乗るなど「自殺行為だ」との声もありますが、「戦争という究極の集団自殺行為」を食い止めるためには、もう「共産党が好きだ/嫌いだ」なんて言ってる場合じゃないんじゃないかしら?

02/22  米大統領選サウスカロライナ州の共和党候補者選びで、極右のトランプ氏が圧勝。と同時に、当初は本命視されていたジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が、とうとう撤退を表明したとのことです。
あのでたらめなイラク戦争を推進した「アホで間抜けな大統領」(マイケル・ムーア氏)ジョージ氏の弟が「穏健派」だというのも妙な話なのですが、他候補から「共和党のマイケル・ムーア」などと揶揄されるトランプ氏の排外主義的なハチャメチャ発言(いえいえ、同じ毒舌でも、マイケル氏の方は至ってまともですよ!)を思い起こせば、確かにそう言えるのかもしれません。
それにしてもアメリカといい、フランスといい、日本といい、今日の世界はどうしてこうも「極右花盛り」なのでしょう? 私らの地球の地軸は、完ぺきに右へと傾いてしまったかのようです。
で、ジェブ氏撤退の話に戻りますと、さすがの米国民も、まるで同じような顔をした「3代目ヤブから棒大統領」の出現には嫌気を催したのでしょう。おまけに、あのトランプ氏ですら、イラク戦争批判をしているというのですから。
「やっぱり、さすがに3代目なんて...」と思って、あたりを見回してみると...、いました、いました! まずは「水爆とミサイル」を抱えたキム家3代目、そして「民主主義と立憲主義の壊し屋」岸家=アベ家の3代目です。
いっとき、「相模屋の一件」(Cf.02/16)までは、まんまと世間を騙しおわせたアベ氏ですが、ようやくメッキが剥げだしたようでして、最新の共同通信世論調査では、1月末の前回調査から内閣支持率をめでたく7ポイント下げたそう。

02/19 「一強支配」に驕る自民党議員の不祥事や放言が、止まるところを知りません。
「おしどり?不倫議員」がさっさと辞任したかと思ったら、息をつく間もなく、今度は、「米大統領は黒人。奴隷ですよ」の丸山和也参院議員発言。しかもこれが、憲法のあり方を議論する参院憲法審査会でのものだというから、ビックリ×2。
腐りきった政権への批判材料がこれだけ次々出てくると、野党5党がきょう提出する「安保関連法廃止法案」が宙に浮いてしまうのじゃないかと、いささか不安にもなります。
そこできょうは、東京新聞が自らの決意も込めて掲げた社説の締めくくり部分「無関心が暴走を許す」を引かせていただきましょう−。

 「憲法を逸脱しつつある安保政策を根幹から正すには、世論の後押しが必要だ。国会周辺をはじめ全国各地できょうも行われる路上の訴えに、安倍政権はあらためて耳を傾けるべきだろう。
 そして何よりも、専守防衛という戦後日本の国是を守り抜く決意を、国民が自ら選挙で示すことが重要だ。諦めや無関心は、政権の暴走を許すだけだ。
 私たちの新聞が、平和主義を貫こうとする国民の側に立つのは当然だ。政府の言い分をうのみにせず、自らの判断力で問題提起を続ける。新聞として当然の役割を、この機にあらためて自任したい。」

02/18 「中国が南沙(スプラトリー)諸島に対空機関砲を複数配備した。...また、西沙(パラセル)諸島に地対空ミサイルを配備した」との、けさの各紙報道には驚かされました。
ベトナムやフィリピンなど周辺諸国との領有権争いが続く中、中国は着々とこれら地域の実効支配を進め、港湾や滑走路までを建設。これに対し米軍が、戦略爆撃機B52を飛ばしたり、「航行の自由作戦」と称してイージス艦を派遣したりと対抗、軍事的緊張は高まるばかりでした。
そんな中での今回の軍事拠点化です。もしもこれが事実だとすれば、昨年9月、習近平国家主席はオバマ米大統領を前に「軍事拠点化するつもりはない」と言明した、あの約束は何だったのでしょう?
「中国の南シナ海での横暴反対」「米中は戦争をするな」「日本の自衛隊の南シナ海進出反対」のスローガンを掲げて「南シナ海問題署名運動」を推進する河内謙策弁護士は、日本の平和運動に対し、次のように「キツーイ注文」を投げかけています(「IK改憲重要情報」、No.132)−。

「戦争になることが確実に分かってから戦争反対の運動をするというのでは平和運動とは言えない、戦争の危険がある時は、その時点で、戦争反対の声をあげよ、それが平和運動の原則ではないか」と。

02/17  いやー、ここまでとはビックリ。きのうの音声データには「続編」があったとは!? 誰が小分けにしたのかわかりませんが、「やじ馬を退屈させないご配慮」なのかもしれません。
朝刊を読んだら、「デジタル版で音声が聞けます」とあったので、さっそく肉声を聞かせていただきました。
確かに、きのうの続きのようです。まずは、URに求める追加補償額の相談を終え、すっかり頭に「20億の札束!」がチラつき始めた一色氏の声−。

 「これでURの方がまとまっちゃうと思うんで、
  えっと◯◯さん〔別の元秘書の名〕がレクサス
  でしたっけ?」

民主党が公表したこのときの会話のメモによると、さらに次のようなやりとりがあった、とされます−。

 一色氏「〔車の〕カタログ持ってきてもらわないと。
     ご本人が全部オーダーしなきゃいけません
     から」

 元秘書(別の元秘書にメールを打ちながら)
    「一色さんが『レクサス何色がいいか』って
     聞いてるよ」
    (と、メールの、文面を読み上げる)

「レクサス」なる高級車、いったいいくらするのかも知りませんでしたが、400万から1600万もするそうです。こんな軽いノリの会話の中で、そんなに馬鹿高いもののやりとりがされるなんて。この連中にとっては、おそらく日常茶飯事のことなのでしょう。
さあ、これで決まった。「不眠症」の甘利氏をはじめ、この連中の国会証人喚問抜きには、肚の虫が収まりませんません。

02/16  甘利明前経済再生担当相の金銭授受疑惑をめぐって、きのうの衆院予算委員会で民主党の玉木雄一郎議員が暴露した音声データとメモは、「善人ぶり」を演じてきた甘利氏の「裏の闇」を白日の下に曝しました。
何かくぐもった様子のその音声は、昨年11月、問題の建設会社総務担当者だった一色武氏と甘利氏秘書とが、前大臣の地元・神奈川県大和市のすし店と喫茶店で会談したときの、秘書氏のものだとされます−。

 「〔UR側に〕一応推定20億かかりますとか、かかると聞いておりますとか、そういう言葉にしてほしいんですね... 実際の金額について細かいとこまでは絡めないですよ... 〔だけど〕今だったらぎりぎり絡めるんで...」(毎日新聞より。なお、このやりとりの音声は、朝日新聞デジタルでも聞くことができます)

時代劇ならさしずめ、「相模屋、おぬしもなかなか悪いのう」とか言いながら袂から汚れた手を出す悪代官=「悪徳政治屋」といったところです。そんな輩がカネに「絡んでる」様子がこれほどあからさまに表に出たのは、おそらく「この国の汚職史上初の快挙」でしょう。
「秘書が金額交渉に介入したことはない」などと大見得切った、前大臣のあの「お涙頂戴記者会見」が真っ赤なウソだったことは、もはやいかなる言い逃れもできません。
そんな田舎芝居にまんまと騙され、お別れの花束を贈ったお役所のみなさん、そして「甘利問題は関係ない」と「アベ政治」を支持し続ける40%の市民のみなさん(朝日新聞世論調査)、「お人好し」も、そろそろこのあたりにしては?

02/15  おととい、きのうと初夏を思わせる暖かさ。そしてきょうは、最高気温が10℃以上も下がるそう。このところの寒暖の差は、もはや異常を通り越しています。
これに負けず劣らず連日、急降下しているのが、東京株式市場の日経平均株価。先週末にはついに1万5千円を割り、1万4952円61銭にまで。実に、1年4カ月ぶりのことだそう。
同業仲間にも株をやっている人がちらほらいますが、このところの株安に、さぞかし気もそぞろといったところでしょう。
しかも、その引き金となったのが1ドル110円台後半にまで急伸した円相場だということですから、「アベノミクス」が金科玉条のようにしてきた円相場も株価も、期待とは真逆の結果がすっかり定着してしまったよう。
それでも「強気を崩さない人」というのはどこにでもいるもので、さしずめこの方なぞは「表彰状もの」。日銀の黒田東彦総裁です。「異次元の金融緩和」だとか、始めっから言うことが大げさでデカすぎるのですが、12日の衆院財務金融委員会でも、こんなふうに言っているのは、さすがです−。

「〔株安に〕マイナス金利政策が影響しているとは全く考えていない。…〔新政策の〕効果は明瞭に出ている」(朝日新聞)と。

「すぐばれるでっかい法螺は罪がない」などと言われることもありますが、「直接に国民生活に大きなマイナスになるということは考えられない」とまで言われてしまうと、さすがにその罪は大きい。

02/12  きょうも総務大臣の話でごめんなさい。連日、あまりにがさつな発言を次々繰り出されるので、どうにも黙っているわけにゆかなくなりまして...。
このご仁、国会がお休みのきのうは、ありったけの知恵を動員して、「放送法第4条に抵触する具体例」を2つだけ絞り出し、ご自分のHPに掲げました−。

「テロリスト集団が発信する思想に賛同してしまって、テロへの参加を呼び掛ける番組を流し続けた場合には、放送法第4条の『公安及び善良な風俗を害しないこと』に抵触する可能性がある」

「〔放送の〕免許人等が地方選挙の候補者になろうと考えて、選挙に近接した期間や選挙期間中に自分の宣伝番組のみを流し続けた場合には、放送法第4条の『政治的に公平であること』に抵触する可能性がある」(朝日新聞より引用)

へっ、バッカみたい! 苦し紛れにこんな極論を例に出して、「言論・表現の自由」に対する自らの不見識を言い繕おうとしたって無理というもの。実際にこの間あなた方が報道機関に政治介入したり、電波法第76条を持ち出して脅しをかけたりしてきたのは、憲法違反の疑いの濃い「戦争法案」の報道に対してじゃなかったのか!?
国際放射線防護委員会(ICRP)勧告のことも知らないで、これを「何の根拠もなく」などと平然と言ってのけた丸川珠代環境相、北方領土の歯舞諸島を「はぼ、何だっけ」と言って読めなかった島尻安伊子沖縄北方担当相...と、「反知性主義的内閣の面々のお粗末」は止むことがありません。
アベ内閣の掲げる「女性の活躍」やら、「一億総活躍社会」やらの内実は、せいぜいそんなところなのでしょう。

02/10  高市早苗総務相はきのうもまた、放送局に対する「電波停止命令」の可能性に言及しています。
これについて、総務相経験者の菅義偉官房長官も、「当たり前のことを答弁したに過ぎない」などと平然と援護射撃をする始末。この内閣の「言論抑圧体質」は、いよいよ完成の域に達したよう。
零細出版人の考えるところ、法律というのは、冒頭に書かれている「目的」がいちばん大事なところです。その「法の精神」がそこに凝縮して表現されていると思えるからです。
「放送法」に関してその「へそ」の部分は第1条で、そこにはこううたわれています−。

「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」

つまり、ここでのポイントは、憲法21条の「言論・表現の自由」を保障することにあります。なのに「反知性主義的内閣」の面々は、ここを素通りして、第4条の「公平」原則をことさらに強調しつつ、自ら「政治的公平の判断者」たらんとするわけ。
そんな内閣の閣僚の中から、きのうはこんな声も聞こえてきました−。

「気に入らないから統制するとかそういうことをやると、民主主義とメディアの関係がおかしくなる…」

うーん、アンタときたまいいこと言うねぇ、石破さん。「自民党、なんかこの頃感じ悪いよね」

02/09 「総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、3箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる。」

電波法第76条には確かにそう書かれてはいます。でも、この「権限」をこれほどまで乱暴に振り回す総務大臣はいなかったのではないでしょうか?
きのうの衆院予算委員会で高市早苗総務相がまた、放送法4条の「公平」規定を持ち出し、そこからさらに一歩踏み込んで「電波停止」を命じる可能性にまで言及しました。
番組が政治的に「公平」かどうかを判断するのは「お上」=権力であり、「お上」がそのように認定したら「電波停止」を命じることがあるかもしれない、というわけです。しかも、わざわざ「私の時に(電波停止を)するとは思わないが、実際に使われるか使われないかは、その時の大臣が判断する」とまで付け加えています。
これが「姑息な脅し」でなくて何でしょう? 免許取り消しに怯える放送事業者の萎縮=「自主規制」という名の「自粛」を狙っていることは明白です。
先日も、101歳のジャーナリスト・むのたけじさんがTVインタビュー番組で、こんなことを言っていました−。

「戦前・戦中、報道機関は上から直接命令されたんじゃなくて、自分たちで忖度して報道規制したんだよ」と。

02/08 けさの各紙は「北朝鮮のミサイル」で持ち切りですが、こちとら「出版業界2発目のミサイルショック」で、とかく足元もフラつきがち。というわけで、きょうはそのご報告−。
先週末の午後、出版取次業界第5位の太洋社が、「書籍・雑誌等の供給継続のお願い」なるA4判7枚の文書を、唐突にFAXで送りつけてきました。
要は、今後は「自主廃業」に向けて「取引書店の他取次への帳合変更」などを進めるとともに、「不動産を中心とする重要資産の換価」と「書店の売掛金回収」によって出版社への「買掛金の支払いに万全を期す」ので、その間は出荷を止めないでね、という話。
似たような文書は、8カ月ほど前に業界第4位とされてきた栗田出版販売(会社更生法適用後、近々、業界第3位の大阪屋と合併)からも受けていましたし、この間、業界では「どこそこが危ない」といった噂話が絶えることはありませんでしたので、正直、「ああ、やっぱり…」程度の受け止めでした。
でも、そうは言っても、業界4位、5位が立て続けにコケてしまったという事実には、きわめて重いものがあります。
このまま推移すれば、取次寡占はいっそう進み、早晩、「出版の自由」すらおぼつかなくなる事態が起こらないとも限らない−。零細出版人は、そこをいちばん心配しています。

02/05 きのうはヨトウムシ諸君の「クサすぎる問答」を引きましたので、きょうはきのうの衆院予算委員会で交わされた野党との問答を採り上げましょう。申し遅れましたが、質疑内容の出典はいずれも毎日新聞の「予算委員会質疑」です−。

 大串氏(民主党)「昨日の答弁で9条改正に踏み込んだが、安全保障関連法審議では『9条改正は国民の議論が熟していない』と語った。」
 首相 「自民党は憲法改正を60年間掲げ続けている。党憲法改正草案には9条2項の改正も示した。(自衛隊を違憲とする)7割の憲法学者がいるのは事実だ。」

またしても、「7割の憲法学者」ですって!? すっかり底が割れきったこの屁理屈、いつまで続けるつもりなのでしょう?
それはともかく、甘利・前経済再生相の「政治とカネ」問題にもかかわらず、最近の世論調査で内閣支持率が上がったことに気を良くしたのでしょう、これまでひた隠しに隠してきた「爪」をおおっぴらにし始めました。
首相が「占領時代に作られ、時代にそぐわない」と言う標的が9条2項であることは、もはや明白。「緊急事態…」なんのという話は、取ってつけたような方便のひとつ。「これぞ本丸」に違いありません。
7月に行なわれる参院選(衆参同日選?)は、まさに「大阪夏の陣」。外堀を埋められてしまう前に、野党は何が何でも結束して事に当たっていただきたい。

02/04 選挙の声が聞こえてくると、あちらこちらで何やら怪しげな田舎芝居が上演されるようになります。きのうの衆院予算委員会での「クサすぎる問答」2題−。

 稲田氏(自民党政調会長)「憲法学者の7割が自衛隊を違憲と解釈している。9条2項(戦力不保持)を放置することが立憲主義を空洞化させる。」
 首相(自民党総裁)「自民党の憲法改正草案は9条2項を改正して自衛権を明記し、新たに自衛のための組織の設置を規定している。自衛隊が憲法違反との疑いを持たれる状況をなくすべきだという考え方もある。」

こうやって徐々に「改憲の本丸」へと近づき、民意を誘導していこういう魂胆なのでしょう。
ついこの間、圧倒的多数の憲法学者が「憲法違反」とした「戦争法案」をごり押しした張本人たちが、今度は「憲法学者の7割」を持ち出すご都合主義。ただただ呆れ返るばかりです。
一方、これに比べりゃかわいいもんだし、あまり注目もされていないようなので、あえて言及するのですが、こちらも「同じ穴のムジナ」同士の田舎芝居−。
「下駄の雪党」の議員が、同じく「下駄の雪」出身の国交相に、長野県でのスキーバス事故について質問をしています。おそらく「見せ場」を演出しようとする、いじましい「営業努力」なのでしょうが。

02/03  けさの朝日新聞オピニオン欄「耕論:快さの裏側に」で、近現代史研究者・辻田真佐憲さん、編集者・早川タダノリさんが、「美と政治の危うい関係」について論じています。
「その昔、楽しい歌や美しい言葉を人々が自ら受け入れ、政治に動員された時代があった」と。
「政治権力は常に文化芸術やエンターテインメントを利用するもの」(辻田さん)であり、「政治の世界に『美』が持ち込まれると、ロクなことにならない」(早川さん)のですが、ここで大事なのは、それが必ずしも「上からの動員」だけで進んだわけではない、という点です。
政治権力の巧みな仕掛けはあっても、「人々が自ら受け入れ」ていったという事実を軽視するわけにはゆきません。
というのは、先日の中野敏男さんのお話(Cf.02/01)で初めて知ったのですが、あの北原白秋に「万歳、ヒットラー・ユーゲント」(1938年)なる作品があり、オペラ歌手・藤原義江が歌ったレコードまで出たそうです。そのさわりだけを拝借すると−、

  「燦たり、輝くハーケン クロイツ
   ようこそ遥々、西なる盟友、
   いざ今見えん、朝日に迎へて
   我等ぞ東亜の青年日本。
   万歳、ヒットラー・ユーゲント
   万歳、ナチス。」

といった具合。「この道はいつか来た道…」の、あの白秋が!? っと度肝を抜かれたリベルタ子ですが、その歌を大音声で聴かされた後での中野さんのお話には、すっかり得心−。

「自発性は〔『いつか来た道』の〕郷愁(絆)を介して国家意識に導かれた」と。
そしていままた、大手を振るって怪しげな連中が蠢きはじめています。

02/02  甘利明・前経済再生相の現金授受問題で、都市再生機構(UR)が、甘利氏元秘書との面談のさいのメモを公表しました。
「結局カネの話か。やはり当該地から速やかに移転してもらった方が良いと思うが」とか、「少しイロを付けてでも地区外に出て行ってもらう方が良いのではないか」とか、「甘利事務所の顔を立ててもらえないか」とか、秘書の発言は一線を越え、かなり危ういところまで足を踏み込んでいます。
おまけに、「私から先方に〔要求金額を〕聞いても良いが?」とまで言って、UR側から「これ以上関与されない方がよろしいように思う」なんて諌められる始末。
かなり熱心な「口利き」と思えなくもないのですが、「準役人」のUR側は「補償額の上乗せについての発言はなかった」と、これをソツなく否定しています。
しかし、今回の公表内容には、『週刊文春』報道との齟齬がいくつも見られます。たとえば−、

「報道では15年12月1日、秘書はUR側を地元事務所に呼び、『大臣もこの案件については知っているので』と迫ったとされる。しかし、URは『これまでの経緯の協議』などと簡単に記載する。出席した中瀬氏〔UR総務部長〕によると、秘書に『大臣もご存じですか』と質問し、秘書から『細かいことは伝えていないが、案件は知っている』と言われたという。文春報道で、秘書らは『顔を立てろ』と言い口利きを迫ったとされるが、URの公表内容は『(UR本社で建設会社に対応して)事務所の顔を立ててほしい』という控えめな要望だったとしている。」

けさの毎日新聞は、そう伝えています。この案件については、まだまだ明らかにしなければならない点が、山ほどありそうです。

02/01  おととい、東京外語大教授・中野敏男さん(社会学)の講演を拝聴しました。演題は、「戦後70年を超えて戦争民主主義を考える」。
あえて「戦争民主主義」−。とても挑発的なタイトルに違わず、大変知的刺激に富む問題提起でした。
「戦争と独裁」に対して「平和と民主主義」。これは私たちの多くが長らく信じて止まない「対抗軸」でした。ところが中野さんは、「自由民権運動と戦争」「大正デモクラシーと戦争」「戦後民主主義が依拠した戦争と独裁」など、いくつもの歴史的事例を検証しつつ、「戦争を支持しそれに依存する民主主義」というのがあるのではないか? と提起します。
そして、今日の「強烈な逆流」=「極右〔安倍〕政権」の登場は、冷戦体制が終結した90年代に「戦後の〔戦争民主主義〕体制からの転換」に失敗したことの結果、であるとします。
で、この政権が推進しようとしているのは、1)対米従属下での冷戦期に続く戦争志向、2)開発援助に需要拡大を託す経済成長志向、3)社会保障を削り「活躍」を求める自発性動員志向、といった「戦後の戦争民主主義の右からの上書き」である、と特徴づけます。
こうして、いま目標とすべきは、「戦後の平和と民主主義を守れ」ではなく、「戦後の戦争民主主義からのしっかりした転換」なのではないか、と。
「戦後民主主義」は決して絶対的なものではありえませんし、その内実を厳しく見つめたとき、このような立論ができるのは確かでしょう。