back number 2015-12(December)

蓼科湖の紅葉(15.10)

12/28 「戦争法案」に揺れた2015年も、残りあとわずか。きょうは仕事納め、これで「吠え納め」とさせていただきましょう。
さて先週、映画監督オリバー・ストーン氏や言語学者ノーム・チョムスキー氏ら米国の著名人70人が、ケネディ駐日米大使の「辺野古が最善」発言に抗議する声明を発表しました。
24日付の沖縄タイムス「9秒でわかるサクッとニュース」を引かせていただくと−、

●ケネディ大使の「辺野古最善」発言に米著名人70人が抗議声明
●普天間飛行場閉鎖を主張し「辺野古移設は解決策にならない」
●平和と人権に触れ「大使は父ケネディ氏の演説を読み直すべきだ」

JFKは1963年にアメリカン大学卒業式で、「パックス・アメリカーナ(米国による平和)」を否定し、「平和とは人権に関する問題だ」と訴えています。これに対しキャロライン大使の発言は、「法律や環境、選挙結果を恥ずかしげもなく軽視する行為」であり、「沖縄の基本的人権を否定するものだ」とキツーイ批判を投げかけた、といいうわけ。
けさの東京新聞によると、カリフォルニア州バークリー市議会など米国のいくつかの地方議会で「辺野古移設反対」決議が採択されているそう。こうした動きが「燎原の火」のように広がり、政策決定者を動かす時がくるのを、来年の初夢としたいものです。

12/25  テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターが来年3月で降板することになりました。

「基本的に反権力、反暴力であり、言論、表現の自由を守る側面もある。あまりにも偏ってはいけないとはいえ、まったき純粋な中立公正などありえない」

きのうの記者会見でのこの発言は、まったくそのとおりだと思います。
でも、安倍政権と自民党が異様なほどメディア介入を強めているこの時期だけに、やはり降板は気になるところ。
というのは、「放送法遵守を求める視聴者の会」なるアベ応援団の意見広告が、TBS「ニュース23」の岸井成格キャスターに個人攻撃を加え(Cf.12/01,02,18)、岸井氏の降板も取り沙汰されており、へたすりゃ「ジャーナリズムの王道に比較的忠実な報道番組」が一挙に失われてしまう心配が出てくるからです。
ちょうど『週刊金曜日』12月25日号の特集「『安倍政治』のメディア支配」の中で、元経産官僚・古賀茂明さんが、「ここまでやるかなという感じ」の政府・自民党による政治的圧力の実態を明かしたうえで、こう述べています−。

「今までは、隠れてやったり、オブラートに包んだりしていた感じがありましたが、…ここにきて堂々と『放送法4条』を前面に出しています。…安倍政権が本気でこのまま突き進めば放送については完全な国家統制の時代に入りますね。」

「どっちを向いてもアベちゃんねる」といった、あまりにグロテスクなメディア状況が現出することになるのです。

12/24  国際NGО「国境なき記者団」によると、フリージャーナリスト・安田純平さんが、シリアの武装勢力に拘束され、身代金を要求されている、とのこと。
拘束したのは「イスラム国」(IS)ではなく、どうやらアルカイダ系の「ヌスラ戦線」のようですが、もしもこれが事実だとすれば、なにせ内戦の混乱下での出来事ですから、いささかも楽観するわけにはゆきません。
安田さんは、11年前にもイラクの武装勢力に拘束されたことがありますが、あのときは現地宗教指導者らの仲介の労が功を奏して無事解放されています。
なのになぜ、安田さんはあえて危険な紛争地域に入り続けるのでしょう? それは、戦火の下に苦しむ弱者がおり、彼らのことを伝える責任がジャーナリストにはある、との強い使命感を持っているからでしょう。
TBS「報道特集」(03.28)が「『イスラム国』から奪還した街」という特集で、シリア最北部の町コバニの実情を詳しく伝えています。取材にあたったのは、フリージャーナリストの遠藤正雄さんなのですが、彼がコバニで一緒だった外国人カメラマンの声を紹介しています(隅井孝雄のメディアウォッチ、pp.208-209)−。

「紛争地帯で市民の生活を伝えなければ支援活動は生まれない、メディアなしではここの人々は忘れ去られてしまう」と。

1年前、フリージャーナリスト・後藤健二さんが「イスラム国」に拘束されたとき、安田さんは「後藤さんは『イスラム国』そのものより内戦による難民に強い関心を持っていた」と語っていましたが、おそらく安田さんも思いを同じくしているに違いありません。

12/22  きのう、全町避難が続く福島県双葉町の中心部に掲げられていた原発推進アーチ「原子力 明るい未来のエネルギー」が撤去されました。
これは「地域振興」のために原発を誘致した双葉町が1987年度の国の「広報・安全等対策交付金」で建てたもの。公募に応じて標語を考えたのは、当時小学6年生だった大沼勇治さん(39)。
その大沼さんらはいま、「原発PR看板の永久現場保存を望む会」を結成し、「原発事故を深く反省し、二度と繰り返してはならないとの思いから、子供達に嘘のない真実の未来を残す為、町で負の遺産として永久保存していくべき」として、「看板の撤去反対と原発震災遺構として永久現場保存」を求める署名運動を進めています。
常陽新聞スマートフォン版に、「脱原発」と書いた紙を看板の前にかざし、「脱原発 明るい未来のエネルギー」と、かつて自分のつくった標語を訂正している大沼さんの写真が紹介されています。あれだけの事故を起こしてしまったというのに、いまだに原発を推進する人々への、何と痛烈な批判でしょう!?
アーチは町役場の倉庫に保管されてしまうそうですが、清水修二さんの差別としての原子力第2部(「ミイラとり酔夢譚−原子力で地域は発展するだろうか」)中扉に写真が掲載されています。見逃された方は、ぜひそちらを。
ついでながら、そこにはこうあります−。

「電源立地におけるさまざまな財政措置は、いわばエネルギー需給をめぐって仕組まれた取引きのシステムである。農村の側は原子力施設を引き受けることによって都市の経済力をほんの一部分ではあるがみずからのものにする手段として、これを利用する誘惑にかられる。しかしこの取引きは本当に農村側にとって引き合う取引きなのか。取引きを通じて地元住民はいったい何を『売っている』のか、よほど冷静に考えなければならない時期ではないだろうか」(p.206)。

もう20数年も前に書かれた文章です。なのにきのう、福井県の栗田一誠知事は関西電力高浜原発3、4号機の再稼働に「出来レースの同意」を与えました。

12/21  中央政府の意のままにならない翁長知事に対する見せしめの仕打ちなのか、このところの安倍政権の沖縄県への冷遇ぶりには目に余るものがあります。
先般、島尻安伊子沖縄担当相が、翁長知事の政治姿勢は沖縄関係予算の確保に「全く影響がないというものではない」などと言い放ったばかりですが、政府はさっそく来年度の沖縄振興予算について、「減額する方向で調整に入った」そう。
翁長知事への「あからさまな兵糧攻め」のつもりなのでしょうが、一方でこの政権は、新基地建設に好意的な「町会」(?)に対しては、沖縄県や名護市を頭越しに直接カネをばらまくよう。
そうした破廉恥な目論見は、今年度の補正予算案にも如実に現われています。「税金3万円で票を買おうとする」かの「低年金受給者への3万円給付」を始め、要は、目先の選挙対策ばっかり。
嗚呼、どこまでも狭量で、思慮の浅い連中なのでしょう?

12/18  小学生の頃、いたずらをしては職員室に呼びつけられていたリベルタ子ではありますが、けさの朝日新聞メディア欄「〈耕論〉放送と政治」の是枝裕和監督のお話には共感−。

「ここ数年の自民党の放送局に対する関与の仕方は異常だと感じています。…呼びつける、しかられる。権力と放送の間にそんな権利・義務関係があるかのような誤った認識が世間に浸透すること自体、大きな間違いにつながる気がしています。」

折しも「政治家に放送法の遵守を求める視聴者の会」が、「私達は、政治家に対し『放送法』の遵守を求めます!!(報道への介入をやめて下さい)」との署名を募っています(Cf.12/01,12/02)。
「BPOは政治家の駆け込み寺じゃない、放送法はテレビ局を黙らせる道具じゃない」と、高市早苗総務相と6人の政府・自民党の「圧力グループ」に「放送法」の遵守を訴えます−。

「自らに批判的な報道を『政治的公平性を欠く』と非難し、第三者機関であるBPOが検証すべきことがらを政府与党がテレビ局幹部を呼び出して問いただす。このような報道への圧力、介入は、民主主義国家として許されないことです。また、放送法の理解としても間違っています。
私たち良識ある視聴者は、政府与党が放送法を正しく理解し、もって報道への介入を厳に慎むことを求め、「放送法遵守を求める視聴者の会」の的外れな批判にも抗議の意を示し、〔「NEWS23」の〕岸井〔成格〕氏はじめ積極的な報道姿勢を貫く報道人を応援します。」

12/17  最高裁大法廷が「家族のあり方」に関する2つの民法規定に憲法判断を下しました。夫婦別姓を認めない民法750条は「合憲」、女性だけ6カ月間再婚を禁じる733条の方は「違憲」とのことです。
後者は、15人の裁判官全員が同じ判断なのでよしとして、「夫婦別姓」の方は、10対5と割れたよう。けさの朝日新聞に、15人の写真と意見が詳しく載っていたので、通勤電車の中でとくと眺めてきました。で、気づいた「ある共通性」−。

1)全員64〜69歳の60代。
2)「再婚× 同姓◯」の多数意見10人は、全員男性。
  しかも、法務省などの官僚出身者。
3)「再婚× 同姓×」の少数意見5人のうち3人が女性。
  残る2人は、弁護士出身者。

そもそも裁判官の構成が偏っています。これでは、国民の多くが望むところとズレが生じて当たり前。そこで、リベルタ子の独断的提言をさせていただくと−。

1)年齢構成を世代的に散らばせる(せめて3世代に)。
2)性別構成をできるだけ平等にする。
3)弁護士など民間出身者を増やす。

これらを制度的に保障する。そして、あの厳めしい雰囲気をいくらかでも和らげる努力をしてみてはいかが?

12/16  年末恒例、日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」に「安」が選ばれたそう。清水寺貫主がでっかい字を揮毫するのをテレビニュースで視て、げんなり。
毎日新聞によると、「安倍晋三内閣のもとで安全保障関連法案の是非が議論されて国民の関心が集まったことや、世界で頻発するテロや異常気象で安全が脅かされ、人々を不安にさせたことなどが理由に挙げられた」ということですが、東京新聞の共同電で、これにはしゃぐ首相の下手な冗談を聞いて、「いやな予感」が的中してしまった感じです−。

「私にとっても『安』だ。安を倍増すると『安倍』になる。どうも失礼しました」

ですって。冗談じゃない。憲法を屁とも思わぬアンタが倍増したのは「不安」だけじゃないのか。

12/15  フランスの地域圏議会選挙第1回投票で、パリでのテロ事件後の移民排斥ムードに後押しされた極右・国民戦線(FN)が大躍進。「フランスよ、お前もか!?」といった感じでしたが、第2回決選投票では、フランス国民の「良識の復元力」が遺憾なく発揮されたよう。
オランド氏らの左派連合とサルコジ氏らの右派連合の協力もさることながら、なによりも第2回投票で投票率が8.5ポイントも上昇し、そのほとんどがFN以外に流れたというのは、極右台頭に対する国民の強い危機感の現われのように思います。
とはいえ、極右がフランス全土でで27.1%、約682万票も獲得したという事実は、いささかも軽視するわけにはゆきません。欧米では、安倍政権がこの極右勢力と近縁関係にあると見る向きも少なくなく、実際、マリーヌ・ルペン党首も、日本の自民党に親近感を持っていると公言しています。その意味でも、これは決してよそ事とするわけにはゆきません。
今回の選挙は、選挙制度の違いはあるものの、私たちも大いに学ぶところがあります。
けさの朝日新聞のインタビュー記事で民主党・岡田克也代表が言っているように、来夏の参院選は「戦後の平和主義が変わるかどうかの分岐点」。「結果次第では憲法改正までいってしまう」大事な節目です。
「9条改憲勢力の議席を3分の2未満に抑える」よう、野党勢力の大胆な協力関係をぜひとも構築してもらいたいものです。

12/14  消費税「軽減税率」問題をめぐるスッタモンダの結論は、「酒類、外食を除く食料品」というところに落ち着いたよう。
ところで世間の関心は、ともすると「外食店でのテイクアウトをどうするか?」といった枝葉末節な議論に向かいがちですが、いちばん大事なのは、1兆円規模ともいわれる「財源をどうするか?」にあります。
「ヨトウムシ」諸君の皮算用では、「税収減の穴埋めは低所得者の医療・介護の自己負担を軽くする新制度の創設見送りなどで生み出す」なんてもののようですが、とんでもない。これじゃまるで本末転倒。「低所得者の負担軽減のために低所得者に負担増を強いるタコ配的発想」とでもいうべき滑稽なご提案です。
「千歩譲って」これで4千億円を捻出できるとしても、未解決財源はまだ6千億円も残ります。けれども具体策の策定は先送り、「来年の参院選後」だそうです。
あまりに人を馬鹿にした話じゃないですか? 彼らの関心は、もっぱら「参院選で有権者をどうだまくらかすか?」にしかないようです。

12/11  消費税引き上げに際しての「軽減税率」問題に決着が着いたようです。結局は、自民党が公明党の主張を丸呑みする形で、据え置きの対象を「生鮮食品と加工食品すべて」ということにしたそう。
この間、国民や野党を蚊帳の外に放りだして、「六千億円まで」「いや八千億円でどうか」などと、築地市場の仲買人さながらの与党協議が続けられ、マスメディアも問題の本質に迫ろうとせず、もっぱらこの「セリのやり取り」ばかりを伝えてきました。
だけど考えてみれば、これはとてもおかしなことです。けさの東京新聞社説が言うように、「国民が納める税金が選挙協力の取引に使われ」たり、「国家の根幹である税制が党利党略で決まっ」たりしていいのか、といった根本的な疑念は拭いきれません。
問題の根底には「消費税の逆進性」があり、その不平等を是正するとの触れ込みで「軽減税率」が言われるわけですが、それは「別のかたちの不平等を生むだけのこと」というのが、この間の「ヨトウムシ」諸君のやり取りから明らかになったのでは?
小選挙区制のもとで定数是正を繰り返しても、「1票の格差」問題の解決にならないのと同様、消費税制の枠内でいくら不平等を是正しようとしても、その解決にはなりえません。
本気で「公正な社会的再分配」を考えようとするならば、このところ緩和され続けてきた所得税の累進課税と法人税を、せめて元に戻すことから始めるべきではないでしょうか。

12/10  けさの朝日川柳「ブラックが赤字になって揚げる白旗」(神奈川県 石井彰)に、思わずニヤリ。いえいえ、笑ってなんぞいられません。
「ブラック企業の代表・ワタミ」が、とうとう世間の厳しい批判に屈した、ということなのでしょう。でも、和解にいたる直接的な動機は、「ブラック」批判に客足が遠のき、「大赤字を出してしまったから」というあたりが、いかにもこの会社らしいところ。
それにしても、この企業の創業者にして自民党参院議員の渡辺美樹氏が、堂々著書に書いていることが凄まじい−。

「ワタミには、『365日24時間、死ぬまで働け』という言葉がある。…そうしろと言うのではない。そんな気持ちで、働いてほしいということだ」

「そうしろと言うのではない」などと卑怯にも逃げの一手を打ってはいるものの、思わず耳目を疑ってしまう言葉じゃないですかっ!
実際、過労の末に自ら命を絶ってしまった26歳の女性社員の残業時間は、月141時間にも上り、「体が痛い。どうか助けて下さい」と、悲痛なメモを遺されたほどです。
こんな会社は、一刻も早く撲滅しなければなりません。今になって、そんなブラック企業に自分の名を冠してしまったことを、さぞかし悔やんでいるのでしょうが、こんな奴隷労働を強いた張本人には、即刻議員辞職して、世間様に謝ってもらいたいものです。

12/09  きのう、北京の大気汚染が最高レベルに達しました。テレビ画面で見る市内は、まるで濃霧の中のよう。周辺の工場を操業停止にしたり、車の通行を半分に規制したりしてもあれだけなのだから、半端じゃありません。
もう10年以上も前の中国しか知りませんが、旧式の車や農耕車を改造したような車が、モクモク排気ガスを出しながら市内を走行しているのを見て驚いたことを思い出します。しかし、高級ドイツ車があふれる今日の北京のように、全市をすっぽり覆うような大気汚染はありませんでした。
12月に入って、北京では1立方メートル当たりのPM2・5濃度が600マイクログラムを超えたそうです(朝日新聞)。おそらくこれは、日本の規制基準値の15〜16倍になるはず。
テレビニュースでは、重武装のマスク姿で街を行く市民の姿や、空気清浄機満開の部屋にこもる子どもたちの様子がルポされていました。はっきり言って、そこはもはや人の住める環境ではありません。
いまこそ「公害先進国・日本の出番」です。世界に冠たる公害防止技術をもって、一肌脱がなければなりません。
ひょっとして、そんなところから東アジアの平和と安定の芽が出てくるのかもしれません。

12/08  一昨年の「特定秘密保護法案」の閣議決定に際し会計検査院が「憲法上問題」と指摘していたとの、けさの毎日新聞の記事(青島顕記者)は、またしても憲法無視のアベ政治の実態を浮き彫りにしました。
特定秘密保護法10条1項は、秘密を指定した行政機関が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがある」と判断すれば、国会などから求められても秘密の提示を拒むことができるとしています。それは「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院が検査する」と謳う憲法90条に反する、というのが会計検査院のきわめて真っ当な主張でした。
結局それも内閣官房に押し切られ、妥協案として「秘密事項について検査上の必要があるとして提供を求められた場合、提供する取り扱いに変更を加えない」とする文書を内閣官房が各省庁に通達することで折り合ったものの、法案成立2年たったいまも、それは実行されないままのよう。
おまけに「戦争法」までもが強行成立させられたいま、今後、防衛支出はうなぎ登りに増えることが必至。となると、「軍機保護法」によって膨大な軍事予算が隠されてしまった戦前日本の教訓が、またまたかなぐり捨てられたことになります。その結果がどうなったかは、周知のとおり。

12/07  けさの朝日新聞によると、政府は南スーダンPKОに派遣する自衛隊への「駆けつけ警護」任務追加を来夏の参院選後に先送りすることにしたそう。
何とまあ姑息な! 先の衆院選では「景気回復」一本槍で選挙民をたぶらかし、実際にやったことはといえば、多くの人が望んでもいなかった「戦争法」だけ。しかも、これを強行成立させたら、さっさと国会を閉めて議論を封じてしまう。
そんな政権のやることですから、しょせん肚の内は見え見え。選挙前に物騒な「駆けつけ警護」などさせようものなら、せっかく沈静化させた世論がまた目を覚ましかねない−。反知性主義的なあの方々が考えるのは、せいぜいそんなところでしょう。事実、前述の記事によれば、「政府関係者」はぬけぬけと、「安全保障問題に注目が集まり、参院選に影響を及ぼす」などと、その動機を白状しています。
でも、世間様を舐めちゃいけません。「もう騙されない!」「今度ばかりは許さない!」といった世論は、いまだに健在です−。

「安保法に実効性を持たせるのは国会承認だ。来夏の参院選で巨大与党の勝利を阻止し、衆参の『ねじれ』を生じさせれば、国会承認は回避できる。今こそ、民意が試されている」

とは、法案強行成立直後に元内閣官房副長官補・柳沢協二さんが語った言葉ですが(朝日新聞、09.20)、いま、同じようなことを考えている人は多いのではないでしょうか。

12/04 「放送を語る会」が、テレビニュースが安保法案国会をどう伝えたか、手分けしてモニターした結果を発表しています(「安保法案国会審議・テレビニュースはどう伝えたか」)。
調査の対象としたのは、この5月11日〜9月27日のNHK「ニュース7」、同「ニュースウオッチ9」、日テレ「NEWS ZERО」、テレ朝「報道ステーション」、TBS「NEWS23」、フジ「みんなのニュース」の6番組。
5カ月間の番組ウォッチングから「浮かび上がってきた最大の問題は、NHK政治報道の政府寄りの偏向」であり、「"政府広報" と批判されてもやむを得ない域に達していた」と結論づけ、「政府からの独立が建て前の公共的放送機関として、その存立にかかわる危機的な状況と言える」と手厳しい。
報告書末尾には、「NHK『ニュースウオッチ9』が報道しなかった事項」、「安保法案に反対する市民の主要な行動と報道の有無」という2つの付表がついていますが、これを見ると、わが「公共放送」の報道スタンスがいかに「偏って」いるかが一目瞭然。

たとえば、「報ステ」「NEWSS23」が報じていて、「ニュースウオッチ9」がネグった項目の一例−。

 6/1【衆院特別委】日本に対して攻撃の意思のない国に対しても攻撃する可能性を排除しないとする中谷防衛大臣の答弁。
 6/中旬 憲法学者へのアンケートほか、「違憲」とする憲法学者が多数であることの報道。
 7/29【参院特別委】戦闘中の米軍ヘリへの給油を図解した海上自衛隊の内部文書について共産党小池副委員長が追及。
 8/5【参院特別委】「後方支援で核ミサイルも法文上運搬可能」という中谷大臣の答弁。
 8/19【参院特別委】安保法案成立を前提とした防衛省文書で中谷大臣の矛盾する答弁を共産党小池副委員長が追及。
 8/下旬 ノルウェーの平和学者、ヨハン・ガルトゥング博士が来日、安倍首相の「積極的平和主義」は本来の意味とは違うと批判。
 9/2 【参院特別委】自衛隊統合幕僚長が訪米した際の会議録について共産党仁比議員が追及。

次に、民放報道が伝えていてNHKが伝えなかった市民の反対行動の一例−。

 6/3  憲法学者法案廃案を求める声明
 6/14 SEALDs(シールズ)渋谷でのデモ
 7/24 「公明党支持層」に法案反対の動き
 7/28 各地で抗議デモ国会前1万5千人参加
 8/13 元総理5氏、法案反対の提言書簡発表
 8/26 法曹関係者、学者らが共同で法案反対の記者会見
 ※その後、採り上げざるをえなくなったものの、それにあてがわれた時間は圧倒的に少ない。

12/03 きのうの毎日新聞夕刊「特集ワイド」は、アベ首相が好んで使う「責任野党」という語の来歴を徹底追究、「"責任野党" って変じゃない?」とやっています。
それによると、「安倍流・責任野党」とはどうやら、「政府・与党と同じ方向を向き、賛同したり提案・議論したりする野党」のことらしい。そんな雑駁な物言いが、昨今、これといった疑問を持たれることなく、永田町やメディア界に流通しています。
そんなとき、年季の入った政治ジャーナリストのものを見る眼は、さすがに鋭い−。

「与党が責任野党と言い出すのは、強引な突破を図るために野党を分断、あるいは取り込もうとする意図がある時です」(森田実氏)。

「安倍さんはひときわ世論を気にするから、自分を攻撃する野党ばかりではイヤなんです。他党を責任野党と持ち上げ、自分と気脈を通じる『別動隊』が欲しいだけではないでしょうか」(野上忠興氏)。

老ジャーナリストばかりじゃありません。上智大教授・三浦まりさんの説く「政治学の基本」は、もっと手厳しい−。

「対案を出す責務は野党にありません。これは海外も同じです。だいたい、説明もころころ変わって不十分、それでいて中身も議論に耐えられないレベルの安保法案を出しておいて『対案出せ』なんて。それこそ政府・与党の責任放棄です。」

ってことは、「"責任野党" とは "無責任与党" が野党を分断するときに用いる常套句」とでも定義づけることができそうです。

12/02 ところで、「〔放送局に〕放送法の遵守を求める視聴者の会」の人々が考える「政治的公平」とは、いかなるものなのでしょう?
ひょっとしてそれは、「政府に楯突くのは偏っている!」ということかもしれませんし、あるいはせいぜいのところ、「賛成/反対両論併記せよ!」といったものなのかもしれません。
「偏っている!」とは、何を隠そう、リベルタ子にもよく投げつけられる批判です。でも、「かび臭い古証文」を持ち出すようで恐縮ですが、私はこう考えています−。

「いわば『イデオロギー的地軸の傾き』が、社会全体をある一定の方向に傾けてしまうのではないか。…
 ある社会の『イデオロギー的地軸の傾き』がいちばん端的に現われるのは、アカデミズムやジャーナリズムの世界ではないのか。
『御用』といえば、時代劇の『木っ端役人』や磯野家の勝手口に出入りする三河屋のサブちゃんの常套文句と相場は決まっていたが、いまではそれが、学者やジャーナリストの頭に冠したほうがお似合いと思えることがある。
 この2つの職業の生命線は『批判精神』にある、と僕は考えている。『批判』を抜きにしては、学問の発展も社会の発展もありえないからだ。しかし、それをかなぐり捨て、時の政治権力と一体化した人々の方が、いまではもてはやされているというのは、不思議でならない。社会の『知的・道徳的頽廃』はここに極まった、と僕はみている」(紙と共に去りぬ、pp.226-228)。

そして、けさの朝日新聞に掲載されたジュンク堂書店難波店店長・福嶋聡さんのコメント「書店は本と本、意見と意見の『交戦の場』だ」には、心底共鳴−。

「二つの意見を並べるだけの両論併記は『中立』とは呼ばない。高みの観客席から眺めているだけだ。民主主義社会の主権者がアリーナに立たないのは不誠実だし、『中立』を正義とする社会は、意見を持つことそのものを攻撃することになってしまう。」

12/01 早いもので、もう師走を迎えてしまいました。
そんなときに届いた署名の呼びかけ−。「私達は、政治家に対し『放送法』の遵守を求めます!!(報道への介入をやめて下さい)」とあります。発信者は政治家に放送法の遵守を求める視聴者の会」
呼びかけ文を読んでびっくり。いささかややこしくなりますが、「放送法遵守を求める視聴者の会」を名乗るグループが先日、「私達は、違法な報道を見逃しません」「放送法第4条をご存知ですか?」などと題する1ページの意見広告を新聞に打っていたんですね。それを出した先は、「右筋」を代表する読売新聞と産経新聞だけだったようですから、知るべくもありませんでした。
で、この人たちが槍玉に挙げているのはどうやら、9月16日のTBS「NEWS23」での岸井成格キャスターの「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」との発言らしい。
これが放送法4条(「政治的に公平である」)違反だとして、4000万円ものカネをかけ「政権擁護の一大キャンペーン」を張ったというわけ。
総務省など公権力が放送番組内容に介入するときに毎度持ち出してくるのが、この第4条。でもこれは、「放送局が自らを律するための自主的な規定にすぎない」というのが従来の一般的な解釈で、同時に、第1条(「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による自由を確保すること」)が公権力による番組介入を禁じている、というのがこれまでの通説。
これを覆そうと、事あるたびに政治介入の触手を伸ばしているのが、今日の安倍政権です。そして今回、「〔放送局に〕放送法の遵守を求める視聴者の会」は、そんな「政権のパシリ」を務めている、とみた方がよさそうです。
この問題について詳しくは、近刊の隅井孝雄のメディアウォッチ:3・11から安保法制までをお読みください。