■『新興教育』の教師 覆刻版
文部省/司法省 編
1)本書は「前編 脇田英彦の手記」「後編 新興教育・教育労働者運動」の2編から成り、文部省の『思想調査資料』第23輯(昭和9年6月刊)収載の「小学校教員と其の生活の実状」、『思想調査資料』第25輯(昭和9年11月刊)にある「教育対象としての児童の間題」、また同省『プロレタリア教育の教材』(昭和9年3月刊)および『プロレタリア教育運動』上下(昭和8年4月刊)ほかと、司法省の『思想研究資料』特輯第6号(昭和8年9月刊)から関係事項を収録。
2)本書の主たる筆者脇田英彦は、治安維持法違反で2度目の検挙を受けた1933(昭和8)年に、獄中で膨大な論文を執筆した。しかし本書収録の『プロレタリア教育の教材』『プロレタリア教育運動』は、脇田英彦の手記をかなり引用記述しながら、あくまでも「思想問題に関し生徒児童の教育の任にある者其の他教育関係者の注意を促し警戒の資に供する目的」で、文部省が編集したものである。彼は3度目の検挙の後、31歳で病死した。
3)原本は、昭和初期全国各地に広がった新興教育運動に対処するため、当局側がマル秘扱いで少部数を関係方面に配布した。上梓後半世紀以上の歳月が経過し、教育者・運動研究家を始め各方面の方々からの要望に応えて、新興出版社が覆刻したものである。
4)本覆刻版刊行にあたり、新たに川合章氏の解説「脇田英彦とプロレタリア敦育運動」を巻末に付した。
5)脇田に代表される戦前の「新興教育」が、文部省の国定教育にいかに対応したかは、現代教育が種々の課題を内包し、教師のあるべき姿・質が大きな社会問題ともなっているとき、きわめて教訓的である。教師・教育研究者はもとより、公共図書館・大学図書館にはぜひ備えておきたい貴重な資料。
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